私は介護保険の枠組みや理念は正しいと思いますが、運用上の問題、たとえば要介護認定のあり方、低所得者の負担増、なぜサービスの利用率が低いのか、ショートステイの利用を促進するにはどうすればいいのか―など改善すべき点は山積みだと思います。
まず痴呆症の人たちの要介護認定のことですが、現場を預かる人たちから改めて問題点を指摘されています。これは制度の導入前から「呆け老人をかかえる家族の会」で改善を求めていたこと。厚生省は来年度以降、認定ソフトを作り直すと言っていますが、それでは手遅れです。痴呆老人を抱える家族にとっては、まさに今日の問題であって、一日も待てない。それほど切実な問題なのです。早急にソフトを手直しするか、それに時間がかかるならしかるべき応急措置を取るべきです。
徘徊の激しい人は初めから要介護2〜3にするとか、救済措置はあるはずです。論語ではないけれど、「過(あやま)ちては則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」です。
低いサービスの利用率
介護保険は低所得者にとってかえって負担増になっているのでは、という指摘も多いのですが。
誠に心の痛む問題です。現在は利用者の自己負担に軽減措置はあるものの、ケアプランを受け入れた要介護者のうち七割の人はサービスを十分に利用していないのが実情です。これでは何のための介護保険かということになる。「経済的な理由で必要なサービスを受けられない」というのは、制度の建前からいっておかしい。そう思いませんか。もちろん介護保険はスタートしたばかりですから、利用者もその家族も不慣れなところがあるかもしれませんが、それでも一割の自己負担はきついという一部の声にどう対処するのか。`今迄は経過措置で保険料はゼロですが、一〇月から半額負担になります。お年寄りやその家族がどうやって介護費用を捻出していくか、大さな社会問題になる懸念があります。
私もヘルパーの人とお年寄りの家を回ってみて、「サービスを受けるのに、そんなにお金がかかるのならやめときます」と言われ、ヘルパー自身愕然としているケースに出合いました。「私たちの仕事はその程度しか評価してもらえないのか」と。ヘルパーの失望もさることながら、わずかな負担に尻込みする人たちもいるのです。それでいいのでしょうか。
「福祉はタダである」という従来の受け止め方が、まだ残っているということでしょうか。