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並行して老人保健施設、在宅介護支援センター、訪問看護ステーションなどを着々と作り、いつでも介護保険を実施できるインフラ整備を終えてきた。一般老人向け家事援助や送迎など介護保険の給付対象にならないサービスについては九三年、東北初の福祉公社を設立。昨年六月、NPO法人藤沢町ボラントピアセンターに衣替え、町内全戸が参加する有償ボランティアの供給体制を整えた。これも東北地方の先駆けだ。

 

「医療・福祉自給率一五〇%」維持をめざし人材・マンパワーを自給自足する

 

「医療・福祉の自給率は一五〇%」(佐藤町長)を自負する藤沢町の課題はそれを維持するための人材・マンパワーの育成。それは「過疎地だからこそできる」と佐藤町長は自信満々だ。「福祉の里づくり」に先立つ産業開発でも藤沢町は過疎地のモデル自治体。町を出て東京の大企業に勤め、経験と知恵を付けた地元出身の若者に目星を付け、町長自身が口説いてふるさとに呼び戻し、企業誘致を任せて成功したのである。医療職は独自の修学資金貸付制度によって地元の優秀な若者を医科大学や専門学校に送り、卒業後はふるさとの施設で働いてもらう人材自給ルートを作ってきた。

こうした人材自給の仕上げが福祉職予備軍を養成するケアチャレンジスクールだ。家庭崩壊の波は日本列島を呑み込んでいるとはいえ、岩手県の山間地では都会と違い祖父母と同居する三世代家族が残っている。スクール参加者に動機を聞くと「かけがえのないおばあちゃんのために」とか「お年寄りが好きだから」と答える子供たちがいて驚くと同時に心強い思いがした。藤沢町のケアチャレンジスクールはそんな土地柄を上手に生かしている。

市場原理を軸とする介護保険制度は、人口の多い都市部なら民間活力の活用が有効に働くが、市場の狭い農村地帯は民間事業者が敬遠するため、ハコモノからマンパワーに至るまで行政が自前でつくるほかない。こうして、ふるさとに若者が働ける場をつくって人口流出に歯止めをかけ、併せて地域の介護力を高めていく。それができることを藤沢町の町長と町民は実証してみせたのである。

介護保険とは、実は“孤立無援”の地域が過疎から立ち直るための仕組みなのだ。

 

 

 

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