また、入居者本人からは、直接職員に苦情を言うのではなく、自治体に電話で相談した例もある。相談したのは、地方公務員を定年まで勤めた82歳の女性。苦情は、「お昼の食事の時、食堂まで行ったが、気分が悪くなり部屋に戻った。その後、介護職員が食事を部屋まで持って来てくれたのでゆっくり食べた。1時間後、その職員が部屋に入って来て、『あら、具合が悪いと言っていたのに全部食べたじゃないの』と、具合が悪いというのはうそではなかったかと言わんばかりの言い方で、怒ったようにテーブルをドン!とたたいて出て行った」というものであった。介護主任は、事実関係を調べるために、その職員を呼んで話を聞いた。職員は、「私は、テーブルをたたいてないし、そんな言い方もしていない」と主張した。「でも、入居者が、あなたの言葉をそのように受け取った以上、説明し謝るべき」と言うと、夜眠れなくなって体調がおかしくなった、医師の診断書もあるので3か月休みます、と翌日から仕事に来なくなったという。
介護保険になって、入居者や家族の意識は確かに変わったが、施設側の苦情に対する受け入れや対応が整っていないため、混乱を招いている。客観的な視点が持てる第三者を相談員として早急に導入すべきである。