老いの住まい No.6
本間郁子
職員と介護保険
苦情続出で戸惑う職員
介護職員として19年のキャリアを持つベテラン。今年4月中旬に開設した特養ホームの介護主任になった。入居者は、全員介護保険の利用者で措置入居者はいない。その介護主任が驚いたのは、利用者本人、家族が苦情や要望をどんどん出すことだ。これまで、このような経験は一度もなかったことである。
ある土曜日、入居者80人のうち40人ほどの家族が面会に来た。すると、8人の家族が相談がありますと言ってきた。たとえば、「先週の火曜日におむつ交換に来た職員は、扱い方が乱暴で怖い。今後はその人におむつ交換をさせないでほしい」「お風呂は、特殊浴槽やリフト浴ではなく普通の浴槽に入れてほしい」「叔母は、自分でできることもあるができないこともある。それなのに、体を動かさないと寝たきりになるから自分でできるだけやる努力をしなさい、と強制的に言われるのはつらいと言っている」「母に上等なタオルを買っておいたのに、1週間でなくなった」「家族でお茶が飲めるような場所はないか。部屋の中だと同室の人が気になって一緒に食べることも内輪の話もしにくい」など。介護主任は、家族の相談をきちんと記録して、調査したり、職員を呼んで確認を取ったり、家族が水入らずで過ごせる場所を探したり、その日でできることは、少しでも解決しようと走り回る。それでもケース会議にかけなければ、解決、改善できないことも多いという。