五〇年も連れ添ってきた夫婦ですから、表情ひとつでその時の状態や気持ちがわかるんです。ボケの状態も変化し、その程度もいろいろ。始終見ていないと、わからんよ。それに年取っても人間、プライドというものがありますわ。プライドを傷つけないような話し方ってあるんです。そこの呼吸はいくら親しいヘルパーでもわからない。家族介護の大切さはそこにあると言いたいですね。
“おしゃべりヘルパー”も必要
江村さんは“おしゃべりヘルパー”も必要だと言っておられましたね。
大阪弁で言えば、“しゃべくりヘルパー”ですわ(笑)。ボケの人を相手にするときは、言葉による介護、介助が必要だと思います。別にヘルパーの資格を持っていなくても、ボケ老人の相手をしてくれる準ヘルパーみたいな人が欲しい。
ところで市長を一五年もやってこられると、地方自治の裏表までわかるでしょう。高槻市は典型的な人口急増都市。インフラ(都市基盤)の整備が大変だったと思いますが…。
確かにわずか一〇年間で人口が二〇万人も増えた都市は、そんなにありません。もともと大阪府庁で建設関係の仕事をやってきたこともあって、よく「下水道市長」とか「ハコモノ市長」とか言われましてね。学校の増設、下水道の普及、文化ホールの建設といろいろやりました。ちょうどバブル景気のころで、財政的にゆとりがあったんです。ハコモノ建設のための補助金のもらい方、使い方にはノウハウがあるんです。それに九四年から市役所内部のリストラ、効率化を進めたこともあって、赤字市政から黒字に転換した。約二〇〇億円の黒字を残して、市長を辞められたのは幸いでした。
市独自で学生ヘルパーを要請
東京では武蔵野市や府中市のように、インフラと共に高齢者福祉に力を入れている市もあります。福祉も重要なインフラではないでしょうか。
その通りです。高槻市でも小学校単位に小規模な特養を作りました。小さな施設をたくさん配置したほうが、使い勝手がいいからです。九六年には「学生ホームヘルパー養成制度」という市独自の制度も創設しました。
それはおもしろいですね。
これからは高齢者や障害者の手助けが必要になると考えて、高校生を中心にヘルパーの養成に取り組んでいます。