九九年度の一年間にここに入所した高齢者は一二五一人、退所した人は一二五六人で、このうち家庭に復帰した人の比率は七八%だった。病院での入院期間が短ければ保険点数の面で病院運営にメリットがあり、在宅ケアの受け皿が整備されていることが家庭復帰率を押し上げる結果になっている。医療と保健と福祉の見事な連携である。
ソフトに携わる人材も、保健婦一五人、リハビリのスタッフ三〇人、常勤ヘルパー七人など介護保険の基準を大きく上回る。ケアマネジャーに至っては病院職員五〇〇人中八五人が有資格者である。人口八三〇〇余りの町でこれだけの陣容をそろえることができるのも、半数以上の雇用を病院が引き受けているため。公立みつぎ総合病院が医療以外の保健と福祉に注ぐお金は、町の全保健福祉予算の約一〇%に当たる。人材も一元管理されているので、一人のスタッフがある時は病院で働き、またある時は老健施設で働くなどいろいろな経験ができるのも地域包括ケアシステムのメリットだ。
福祉バンクのボランティアがお世話係になって開く“ふれあいサロン”。
ナイトケア、ナイトパトロールも
週三回、訪問看護を受けている三信逸三さん(八三)の要介護度は5。交通事故による脊椎損傷で下半身マヒになって十二年、この間ずっと訪間看護を受けながら自宅で暮らしている。サービスの内容は全身のバイタルチェック、排便、清拭、手足のリハビリを二時間余り、二人の看護婦さんとのおしゃべりも楽しみの一つだ。長らく三信さんを介護してきた奥さんも手足がやや不自由になり、要介護1の認定を受けた。三度の食事作りはホームヘルパーに頼んでいる。
全介助の看護を受け、月二回デイサービスに通い、毎日ホームヘルパーに来てもらっている三信さん夫婦のサービスの負担金は、それでも一万円足らず。脊椎損傷という疾病があるため医療保険と介護保険をうまく組み合わせることができ、一番負担が少ないようにとケアマネジャーが設計した結果だ。介護保険のサービスの限度額いっぱい利用しなくても必要なケアを受けられるようケアプランを立てることができるのも、ケアマネジャーが医療、保健、福祉のすべての現場に通じているためだろう。