山本さんも個人の資格で参加した。「メーカーとか商売とかを超越し、個人として地域の人々と一緒に考えなさい、必ずしも自社の商売に結び付かなくてもよい、と言っているんですよ」と吉田室長は山本さんにエールを送る。
土地の取得、施設の管理・運営、各種の契約・交渉などはそれぞれの専門家が行う。食料品や紙おむつの購入、ルーム管理などは地域のボランティアや地元商店が協力する。近隣の農家が新鮮な野菜を提供したり地域医療機関の援助もある。周辺のビジネスは自ずと活性化し雇用の促進へもつながる。一企業による取り組みよりも多様な人材とネットワークを活用する方が実践的で地域社会への貢献度も大きい。「ただし、事業活動の無駄を少なくするためには、企業の持つ経営手法や組織運営のノウハウを活用することが必要です」と田中支店長は企業の立場も忘れない。
今、山本さんは「葉山複合福祉村」の建設に取り組んでいる。神奈川県葉山の海岸近くに建設予定で、自然の緑に囲まれて南欧・地中海風のグループホームなどが建ち並ぶ福祉のまちづくりだ。ボランティアはもちろん、県内の医療法人や企業、NPOなどが協力して運営する。いよいよ理想の実現へ向かってスタートした山本さんがうらやましい。
(取材・文/三上彬)