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タクシーが生き残るためには、新たなサービスが必要

 

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会員は入会金1万円、月会費1000円で通常のタクシー運賃のみ。移動介助は30分で700円。会員以外の利用者は1回呼ぶと500円の指定料、移動介助は30分で1200円。

 

そもそも木原さんがケアタクシーを始めようと思い立ったきっかけは、「今のタクシーを商品として見たとき、存在寿命を終えようとしている“デッドエンド商品”ではないか」という危機感からだという。

「親父が社長をしていたので大学卒業と同時に会社に入ったものの、タクシーというのは、近年、これ以上落ちるところのない職業の受け皿として存在してきた経緯がある。しかも、タクシー業界というのは既得権益に守られた護送船団方式だから何をやっても同じ。そういうタクシーの持っている宿命というか仕組みが嫌でね。一〇年ほど仕事を離れて、青年会議所でプラプラしていたんですよ。でも、四〇歳になると青年会議所も卒業。もう一度社会に戻らなければならなくなった時、悲しいかな、自分の戻る場所はここしかなかった。それで、タクシーが堂々と生き残り、社会の一翼を担う産業になるためにはどうすればいいのかを真剣に考えてみようと思ったわけです」

二一世紀は心を満たす時代。何が求められ、何を与えることができるのか。その模索の中で木原さんがたどり着いたのは、「タクシーを、幸せを運ぶ究極の乗り物であるきん斗雲にしよう」という、突拍子もない構想だった。きん斗雲というのは、言うまでもなく西遊記の主人公である孫悟空の乗り物である。

「三蔵法師という尊いけれど力のないお坊様を、魔物達などのいろいろな障害から守りながら天竺まで送り、ふたたび、元の地に無事送って帰る。この一飛び万里を駆ける“きん斗雲”にタクシーがなれれば、人々はタクシーを使うことに対して、満足感や幸福感を味わうことができるはず。そしてきん斗雲をもっとも必要としているのは、高齢者や障害者などに代表される行動の自由を制限された方々であることに気づいた。

 

 

 

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