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不足するデイサービス

 

ご著書の中で「寝たきりにならないために通所ケアを」と説いておられますが、現実には介護保険が始まってデイサービスの回数が減ってしまったという例が多発しています。

 

要介護度に合わせてサービス量の上限が決まっているために、介護保険が始まったのに受けるサービスはかえって減ってしまったという例があちこちで起きている。これは残念なことです。高齢者が痴呆や寝たきりになる最大の要因は「閉じこもり」なんです。隣近所との付き合いもなく、誰とも話さずに一日が過ぎる。これでは元気がなくなるのは当たり前です。私は、一九七八年にそのことに気づいて以来、ずっと通所ケアの必要性を言い続けているんです。

デイサービスやデイケアに行けばいろんな仲間がいるし、入浴サービスやリハビリを受けることもできる。第一、きょうはデイサービスに行く日だとなれば、朝からちゃんと身づくろいをするでしょう。これが大事なんです。出かけるという行為がお年寄りの心持ちを前向きにさせ、デイサービスでいろんな人と交わることによって心身共に活性化するんです。一日デイサービスで過ごせば、快い疲労感で夜もぐっすり眠れる。通所ケアが高齢者にとって非常に効果的であることはおわかりいただけるでしょう。

介護保険は施設から在宅へと介護サービスの転換を図った制度ですが、通所ケアを重視する立場からいえば、「施設から在宅へ」ではなく「施設から地域へ」介護サービスをシフトさせるものであってほしいと思います。地域のデイサービスに通うようになれば、自然に閉じこもり症候群は解消されます。通所ケアを充実させることで痴呆や寝たきりの八割は予防できるとさえ言われていますが、現実にはまだまだ足りないと言わざるを得ませんね。

 

間に合わないケアプランづくり

 

介護保険がスタートすると現場は大混乱するだろうといわれていましたが、実際はどうだったんでしょう。

 

当初、サービスを提供する社会資源が足りないというハードの問題が心配されていましたが、私はむしろソフトの部分はどうなんだろうかと気がかりでした。たとえば、ケアマネジャーはその能力を持っているのか、訪問介護はきちんと役割を果たせているのかといったことです。これは目にはハッキリと見えませんが、この部分がうまく機能しないと現場は混乱してしまう。

案の定、大混乱が起きています。一つ例を挙げましょう。私の病院でリハビリ治療を受けて退院したお年寄りのケースですが、要介護認定は受けたものの、待てど暮らせどケアプランができてこない。

 

 

 

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