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高齢者宅を訪問して調査するリフォームヘルパー

 

介護保険制度のスタート後は、保険からの給付(要介護度に関係なく、一人当たり上限二〇万円の改修費を給付、自己負担は一割)を優先させている。もちろん従来の制度もあるので、場合によってはその助成を受けることも可能だ。加納課長補佐は「昇降機の設置やスムーズな移動のための壁抜きなどは介護保険の対象ではありませんが、必要と判断されればこれまでの制度を使った助成の対象にしています」と説明する。

「リフォームヘルパー制度」を導入している自治体は全国的に見ても少ないが、犬山市には七年近い歴史がある。この制度がなければ、介護保険の利用者・家族は工事業者と相対で話し合い、自己判断で改修内容を決めなければならない。専門家としての視点がないから、本当にその改修プランが要介護者にとって効果があるか判断できない。施工後に「こんなはずではなかった」と後悔することにもなりかねないのだ。

在宅福祉サービスを向上しようと積極的に取り組んできた「リフォームヘルパー制度」が、介護保険の導入に当たり、期せずして強力な制度補完システムとなった。さらに、建築士の一人は、「リフォームヘルパーとしてさまざまな相談・指導を続けていく中で、得られたノウハウを一般の建築物にも取り入れることができるようになった」と語っている。要介議者の生活環境改善の枠を超えて、この制度が住環境のバリアフリー化を推進するきっかけとして機能し始めている。

 

サービスの質を底上げ

 

犬山市の場合には、その保守的な士地柄が幸いし、行政が介護保険に積極的にかかわるスタイルをつくり上げた。その手法に対して、民間活力の導入を阻んでいるのではとの批判もある。しかし、市民からの要望がある限り、また、民間事業者のサービスが市の提供するサービスの質を大きく超えない限り行政サービスはなくなることはないだろう。市は民間事業者との競争を考えてはいない。しかし、結果として民間事業者のサービスの質を底上げする役割を担っているのだ。

 

 

 

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