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堀田 日本はスポーツでも学業でも会社でもエリート主義、管理主義を引きずっていて、まさにこれとの戦い。私もそこを何とか切り崩していきたいと思って、いろいろな審議会だとか、憎まれ口を叩いています。今のような冷たいギスギスした仕組みではとても温かい社会にはならないですから。

川淵 一つ伺いたいのは、一〇〇人いれば一〇〇通りの意見があって、たとえば五人の意見に重点を置いて九五人のほうはどうでもいいとはいえない。どう全体を幸せにしていけるのか。今、介護保険でもいろいろ問題が指摘されていますが、堀田先生の活動の中でそうした悩みはありませんか?

堀田 確かに「最大多数の最大幸福」はずっと民主主義の基本ですね。でも少数の人だって絶対幸せになりたい。だから私は大変欲張りだけれども、あるべき目標は「すべての人の最大幸福」だと言っているんですよ。

川淵 それが理想ですよね。

堀田 政策では必ずその種の問題が起きます。でも私たちの活動は人に原点を置こうと。みんなが役に立ってよかったなと思える社会、仕組みにしたい。寝たきりになったって会話でボランティアをすることもできる。みんながそうして自分の思いを生かせれば、全員の最大幸福につながるし、それなら絶対に不可能ではないぞと。私の夢ですね。

川淵 そうかあ、なるほどね。人間の心の問題として考えて、すべての人が生かされるように。政策とはまた別の考え方でいいわけですね。

堀田 政策でも、多数意見だからいいということばかりでもないですよね。介護保険の議論でも、たとえば家族介護を当然とする政治家がいる。賛同する人のほうがまだ多数かもしれない。でもそういう親父さんに限って、奥さんや娘さんが倒れたっておしめを替えたりは絶対にしないし、結局は家族の美風という言葉で特定の人に押し付けようとしているわけですよ。私たちはたとえ少数意見となってもそうした魂胆が見える発言は認められないし、自分もやる、家族もやるという平等の中でいい家族をつくる、いい仕組みをつくる、そういう方向にしようと働きかけています。

 

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