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川淵 一歩一歩ですが、めざす方向には何とか行けているというところですかね。強い日本代表っていうのはある程度放っておいてもできるんですよ。でもぼくが本当にやりたいのは、広くみなさんにスポーツを楽しんでもらえる場所をつくること。地域社会の核になるスポーツクラブという考え方は日本ではゼロに等しいでしょう。緑いっぱいの芝生のグラウンドで、そこに行けば楽しく遊ばせてくれる人がいる。運動が苦手な子だっで高齢者だって、それぞれに楽しめるような場所ですね。

堀田 そこが地域交流の場になって大人たちも憩い、子供たちも自然にふれあう中で身体も鍛えられ、心も成長していける。子供だって場所や機会が与えられさえすれば、自然に伸びるんです。

川淵 本当にそうですよ。昨日、孫がぼくの家に来ていて、覚えたての縄跳びを持って「じじ、一緒にやってくれ」と。こっちも疲れちゃうけど(笑)、でも一生懸命跳ぼうとしてがんばってる。これが大事なんですね。嫌々やらされるんじゃなくて、自然に身体が鍛えられる。緑の芝生のグラウンドがあったら、土よりコンクリートよりそこで走り回りたいと思うでしょう。たとえ百年かかってもそういう場所を日本のあちこちに作っていこうというのが百年構想なんです。

堀田 勉強だって同じですよね。小さいころ「どうして?」とかいっぱい聞く時に教えていけばどんどん知的な好奇心が広がって勉強する。それをしないで後で決めつけて教える。もう拷問ですよ。

川淵 孫も「何で?」とか「これは何?」とかね、三〇分相手をするのも大変だけど(笑)、でもそれをうるさいとか言っちゃいけないのと同様に、スポーツだって自然に遊びたくなるような環境があって、たとえ勉強がだめでも自分が誇らしく見せられる場所がある。情操教育上ものすごく大切だと思うんですね。

 

●Jリーグ百年構想…人々が世代を超えて交流を広げ、豊かな人生を過ごせる核として、地域に根差したスポーツクラブを作り、スポーツを核とした地域交流の発展をめざそうという理念とその活動。

 

 

 

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