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「施設が自分たちの提供するサービスについて一つひとつ丁寧に利用者や家族に説明するということは、当然の義務と責任であった。ほとんどの利用者や家族が、職員は何人いるか、それぞれの職員がどんな役割を果たしているのかさえもわかっていなかったということに愕然とした。こうして、一人ひとりと向かい合って話すことで、普段話さない家族も多くのことを質問してきた。その中から施設に何を望んでいるのかということも少しずつわかってきた。これまでは、職員が入居する人に対して一方的に質問し守ってもらうことを説明するだけというのがほとんどだった。施設がサービスを与えるという認識しかなかったのだということに気が付いた」と、15年間の仕事を振り返るように話した。

ところが、3月30日、介護保険がスタートする2日前になって厚生省の介護保険「解釈通知」が届いた。そこには、重要事項説明書は新規の入居者や家族に対しては、これを交付し説明を行い、サービスの提供について同意を得なければならないが、旧措置者に対しては、必ずしもこのような手続きは必要ないとあった。利用者とサービス提供者が対等であるということを示す重要なことが、なぜ旧措置者には必要ないのか。行政の考え方にどうしても納得できないという。でも、「私の施設は契約書も重要事項説明書も交付する」と言った。

 

 

 

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