「ケアマネジャーがこの身分証を持っていれば、お年寄りはケアプランの作成などを安心して任せることができる」(北波課長)という。
さらに、九九年一〇月から今年一月までの四か月間、各区役所の保健福祉センターの職員が中心となって自治会や老人クラブを主な対象に「介護保険出前トーク」を行った。これは、いわゆる介護保険に関する説明会で、延べ三四六団体、一万九二九六人の市民が参加した。こういった事前準備が効を奏した格好だ。
医師、弁護士ら七人の平準化委員会を設置
市が特に力を注ぎ、また市の特徴となっているのが、「公平・公正な要介護度の審査判定」と「サービスの質の確保」である。
この「公平・公正な審査判定」を行うための役割を担っているのが全国的にも珍しい「平準化委員会」だ。この委員会は、医師や弁護士などの学識経験者七人で構成され、要介護度を審査判定する「介護認定審査会」の中に置かれている。通常の認定審査合議体(一チーム五人の委員で構成。北九州市では七四チーム三七〇一人が従事)の審査・判定基準の平準化(認定審査合議体間の判定のズレを少なくすること)が主な役割。
一次判定と二次判定で「三段階以上要介護度が上下したケース」や、「要介護1から要支援へ」あるいは「要支援から非該当へ」といった大きな不利益が生まれるケースを認定審査合議体による再審査の対象とする。平準化委員会は一回目と二回目の認定審査合議体の審査結果を比較検討し、どちらの判定により合理性があるかを評価している。いわば最終チェックの役目を担っているのだ。
委員の一人で福岡県弁護士会北九州部会に所属する中野昌治弁護士は、平準化委員会の成果をこう語る。
「評価したケースを審査合議体にフィードバックすることによって、審査合議体ごとにあった判定のズレが小さくなった。審査結果のバラツキをならすことによって審査する側にも、また審査される側にも安心感が生まれている」