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今、自分が接しているお年寄りというのは、戦争があったり、貧困があったりと、すごい時代を生きてきた人たちじゃないですか。今まで本や教科書でしか知らなかったそういう話を聞くのはすごく新鮮だし、学ぶことも多い。そういう中で自然と、人生の大先輩であるお年寄りに対して、尊敬の気持ちを抱くようになりまして、ふと気づいたんですよ。自分は、お年寄りが大好きだということにね」

また、レクリエーションの分野は、自分で頭を働かせれば何でもできるという、広がりのある仕事であることもその理由の一つだという。ただ現実に目を移せば、高齢者のための環境整備といえば、介護保険を筆頭として身体介護に重点が置かれ、高齢者にとって住みやすく、まだまだ楽しい社会づくりは二の次になっている。だが、「レクリエーションというのはそんなに不必要なものなのか」と、金子さんは疑問を投げかける。

「だっていくら体が元気だって、心が寂しかったり、貧しかったりしたら、何の意味もないじゃないですか。逆にたとえ、まひになってしまっても、楽しい生活が送れれば生きる張り合いは持てるもの。もっと心の部分に目を向けるべきだ、と自分は言いたいですね。だからこそ、これからは地域で暮らすお年寄りはもちろん、施設に入所しても、病院に入院しても、人間らしく生活ができる社会をつくっていくことが急務だと考えています」

その第一歩をこの職場から実現していこうというのが、金子さんの当面の目標。

「そのためには、もっと一人ひとりがこれまで生活してきた過程を大切にした、個別性を持ったレクリエーションを提供して、患者さんが“自ら楽しむこと”ができるような状況をつくり出していかなければと思っています」

二一世紀を担う若者が、「心」に目を向けた高齢者福祉に取り組もうとしている。そのことがたまらなくうれしく、その大きな体がより一層、頼もしく見えた。

 

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昨年のクリスマス会では、金子さんが受け持つ合唱クラブのメンバーからなる合唱団が大活躍!

 

 

 

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