それであえなく断念したんですが、進路を決める時期になって、どうしたもんかと思った時、何となく福祉でもやってみようかなという気になったんです。それまであまり仕事について真剣に考えたことなどなかったけれど、性格的に人と接する仕事のほうが向いているんじゃないかと思ったもんですから」
よほど、らしくなかったのだろう。この決断は周囲の人たちにとってはかなり意外だったようで、両親は「いつからそんなことを考えていたのか」と目を丸くし、学友たちからは「そんな学校へ行っても、どうせすぐ辞めるさ」と、散々けなされたとか。「実際、レクワーカーコースを選んだのも、何となく楽しそうぐらいの気持ちでしたから、入学当初は授業を受ける態度もいい加減で、学内でも評判悪かったんですよ」と、当時を思い出して苦笑する。
そんな金子さんの心境が一転したのは、実習先で実際に福祉レクワーカーとして働いている先輩たちの姿を見てから。
「まず、学校で勉強していることで実際に専門職として働ける場があるということが驚きでしたし、患者さんたちが楽しそうにしていたのも印象的でした。それで、ああ、人に楽しみを与えられる仕事っていいな、自分もこの仕事に就きたいと、初めて真剣に考えるようになったんです」
人は知識を持つことで、体験をすることで、変わるのである。
節分の日には鬼に扮して、各病室を慰問。「お年寄りが喜んでくれるなら、何にだってなりますよ(笑)」
一生、高齢者福祉の世界で働いていきたい
金子さんいわく、「学生時代に興味を持ち、働き、始めてからどんどん好きになり、今は一生、この世界でやっていきたいと思うようになった」というレクワーカーの魅力とは、果たしてどこにあるのだろうか。
「患者さんはドクターやナースに対しては“〜していただく”という気持ちが強いんですが、自分たちは一緒に楽しむことができる対等な存在として、親近感を持ってもらえることですね。