「今、もっとも力を入れているのはクラブ活動です。うちの病院の場合、ほとんどが長期入院患者ですから、入院というよりも生活の場と言ったほうが正しい。であれば、生活の中には、やはり楽しみなり、張りなりが必要じゃないですか。自分のことを考えたって、仕事が終われば酒を飲みに行くし、休みの日には野球やサッカーを見に行ったりするわけですからね。それで、お年寄り一人ひとりがそれぞれに合ったレクリエーションをできるようにと、複数のレクリエーション素材を用意することにしたんです」
クラブ活動を始めてから四年になるというが、中には始まる一時間も前から席に座って待っているくらい、活動を楽しみにしている患者さんも少なくない。また、日常の中での楽しみということに加えて、コミュニケーションが生まれることで友達ができたり、クラブ内での役割を決めることなどによって心身の機能回復にも役立つなど、さまざまな二次的な効果も見られるという。
「自分は合唱クラブの担当をしているんですが、昨年のクリスマス会の時には、二か月くらい前からみんなでがんばって練習をして、発表をしたんですね。それが終わった時には、患者さんが泣きながら“ありがとう”と言ってくれた。この時は感激しましたね。新しい分野の仕事なので、日々、試行錯誤しながらの取り組みだし、失敗も山積みですが、その分、やりがいも十分です」
そう言って、金子さんは屈託のない笑顔を見せた。