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介護保険制度を育てる利用者の積極性

 

今回S家では、限度額に十分余裕を持った単純なケアプランからスタートした。しかし、それでもこの大変さ。「内々に“禁止令”が出ている」(ある市担当者)と、都道府県レベルの締め付けまで耳に聞こえてくる。現状では残念ながら行く手に壁があり過ぎてケアプランの自己作成は非常に「狭い道」と言わざるを得ない。

ケアプランを自分で立てること自体に無理に固執する必要はないけれども、当初の懸念通り、現状ではケアマネジャーの中立性(さらに言えば利用者側に立った職務遂行)に多くの疑問が集まっている。

ある福祉用具関連の会社に勤めるケアマネジャーは、「給付管理などの事務作業に追われてもっとも大切な利用者のプランを立てるための時間が足りず、事業所に所属していては公正中立が保ちづらい。また一件六五〇〇円から八四〇〇円の報酬では、サービス部門で収益を上げないとやっていけない」とジレンマを訴える。必死に利用者の声を聞こうとがんばるケアマネジャーたちにも思うようにならないつらさがある。

今一番大切なのは、利用者の希望をしっかりとケアプランに反映させること。すべてを自分でやらなくとも、自分なりにしっかりと知識を持ち情報を集めた上でケアマネジャーに相談することが必要だ。その上で専門家としてのアドバイスや細かい事務処理をお願いするようにしてもいい。その途中で、困ったこと、疑間に思ったことなどをどんどん声に出して明らかにしていこう。積極的にかかわっていこうという利用者自身の姿勢が、より満足度の高い介護保険制度へとつながっていく。ひいてはそれが、心豊かな高齢社会の基礎となるのである。与えられる福祉から求める福祉へ、みなさんも一緒に社会を変えていきませんか?

 

*自己作成を積極的に支援する市町村の話題、自己作成に関するエピソードなど、情報やご意見もお待ちしています。

 

 

 

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