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初めはケアマネジャーに頼んでしばらく様子を見てからでも、これくらいなら自分でもできそうだと思ったら自己作成に切り替えてもいい」(厚生省老人保健福祉局振興課)と、前向きな姿勢を見せる。

 

自己作成の普及はなるか?

 

ところで、実際に自己作成のケアプランを提出した利用者はどのくらいいるのだろうか。今回の取材の過程でわかったところでは、介護保険スタートに当たり比較的充実した自己作成の手引きを用意していた東京都杉並区で一〇件。主要なところでは仙台市三件、横浜市九件、名古屋市六件、神戸市二件、福岡市一件などいずれもごくわずかな件数しかない(大阪市は回答を得られず)。

実際に自己作成に対応した何人かの市町村窓口担当者に聞いてみたところ「大変勉強になったし、今後も希望者がいればできる限りサポートしていきたい」という支援派が多かったが、「自己作成はプラン自体が比較的単純なケースが大方で、非常に意識が高く勉強熱心だったり身近に詳しい人がいる場合が多く、誰もができるとは思えない」という一致した感想をもらった。いずれも相談者はもっと多かったのだが、説明すると大半があきらめたという。中には、「支援事業者に依頼するよう極力説得しています」と公言する担当者もいた。

さらに率直な声として、仮に自己作成が毎月一〇〇件、二〇〇件となった場合、記載事項確認や市町村から審査支払業務を委託する国民健康保険団体連合会への給付管理票の送付という事務負担に、現状の人員で対応する自信がないという指摘もあった。

前述の小國さんは、「今の制度では、ケアプランを素人が何のサポートもなく立てることはまず不可能。自己作成を応援するためには、今後、市町村や事業者など介護保険業務に直接かかわるところ以外に、じっくりと作成やトラブルの相談に応じることのできる支援機関の整備が必要」と提言する。

 

 

 

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