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老いの住まい No.3

本間郁子

 

入院はさせられない

 

介護保険の導入に伴い、家族が私のところに相談してきた内容でもっとも多かったのは、「入院」についてだった。

3月に、特養ホームの訪問調査研修会の説明をある地方で行った時、そこに参加していた、妻が痴呆症で特養ホームに入居しているという一人の男性(82歳)から質問があった。その施設では、今年に入り家族に対して、施設長から介護保険の説明があったという。その中で、施設長は、「これまでの措置制度では、3か月までの入院であれば無条件で施設に戻ることができたが、介護保険制度では、入院が6日を超えると、もう施設には戻れません。再度入居を希望する者は、待機者として順番が最後になります」と説明。たった6日間の入院で出て行かなければならないとは、「とんでもない」と家族のみんなはお互いに顔を見合わせて騒然となった。施設側は、介護保険でそうなっていると主張するばかりで、それ以上の説明は何もなかったという。

その男性は、「お年寄りは、骨がもろくなっており転倒するとすぐ骨折したり、ちょっと風邪をこじらせてしまうと10日ほどの入院はよくあることだ。痴呆の妻の場合、1年に1〜2回は入院している。昨年の暮れには、施設でインフルエンザが流行してかなりの人が入院した。1人のお年寄りはそれで亡くなった。6日間を超えて施設に戻れないとすると、病院にそのまま入院するしかないのか」と言う。

 

 

 

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