老人介護は家族だけでなく社会全体で支えよう―設立してからそう訴え続けてきた「呆け老人をかかえる家族の会」は今年創立二〇周年。代表理事の高見国生さんは介護保険実施を追い風に「呆けても安心して暮らせる社会」に向けて一層強く国に働きかけていくという。
(聞き手/尾崎雄)
やっと認知された痴呆性老人の介護
難産だったとはいえ介護保険はともかくスタートしました。次の課題は痴呆性老人対策ですね。
森内閣が発足する前日、日本経済新聞から新総理に対するコメントを求められました。二〇年前、京都で私を含めてわずか二〇人の痴呆性老人を抱える人たちが「家族の会」を立ち上げた時を思い起こすと、やっと痴呆性老人問題の存在が社会的に認知されたと感慨が深かったです。
六〇歳代前半で脳梗塞で倒れる人もいますが、こういう場合痴呆が残る恐れがあります。初老からの痴呆を介護する家族は本当に大変です。介護保険の矛盾は痴呆問題に集約されているので痴呆対策に力を入れてほしいとお答えしておきました。
三つの課題
たとえばどんな対策か必要でしょう?
世間は介護保険について三つの勘違いをしています。
まず契約の勘違い。被保険者は介護サービスを提供する事業者を自由に選択できる建前になっていますが、契約は対等ですから事業者も利用者を選ぶことができます。その結果、事業者は低い介護報酬しか取れない利用者とは契約しない。とりわけ痴呆は要介護度の割に手間がかかるから事業者に敬遠されがちです。
二番目はコンピュータ判定の勘違い。ソフトがきちんと作られていなければコンピュータは間違った結果を正確にはじき出します。たとえば痴呆老人は体が元気なら問題行動があっても「自立」と判定されてしまいます。ソフト作りの元データを手間がかかる在宅老人でなく流れ作業でケアできる施設に入居している老人から取っているからです。
三つ目は介護保険になればすべて安心だという勘違い。費用負担が減るという思い込みです。