会社経営で培ったマネジメント力をトコトン市政の効率化に役立てている。「市役所は市内最大のサービス会社。市民のみなさんからいただいた税金にどれだけ付加価値を付けて返せるか、CS(カスタマーズ・サティスファクション=顧客満足度)を高めたい」
高浜市の福祉は、このように強いリーダーシップによって介護保険のスタートを切った。だが、これからは市民が自ら行動を起こし、市民の手による福祉のまちづくりが求められている。
市民を主役にする「しかけ」
市長をはじめ誰もが口にするように、高浜市は保守的な土地柄。NPO(民間非営利団体)ひとつない市民活動不在のまちだ。その市民を主役にするために市長はヘルパー養成講習会という「しかけ」をつくった。九二年度に始まり、既に二、三級合わせて約五〇〇人が資格を得ている。資格を取得した女性たちの間に、徐々にではあるが、「何か恩返しがしたい。自分たちで何かをやっていこう」という機運が盛り上がっている。岸本福祉部長は「彼女たちの中からNPOが育ってくれれば」と期待をかける。
宅老所「あっぽ」は、そんな女性たちがボランティアで運営する施設。十数人の高齢者(いずれも八○歳以上の女性)が保健婦の巧みな指導で痴呆にならないための運動を楽しんでいた。ボランティアは昼食を作り提供する。時には市長がふらっと立ち寄って、お年寄りと一緒に食事をすることも。
ボランティアの一人として活躍する市長夫人の好美さんがこんな話を披露してくれた。「私が寝たきりになったら市長を辞めて面倒を見る」と森市長は約束したという。
積極的な情報開示でサービスの質を高める
森貞述 高浜市長
本来、自治体というのは黒子に徹するべきだと考えています。市民主導に変えるために、いろいろな「しかけ」を考えるのが行政の役割。市民活動のプロデュースとコーディネートに徹したい。年頭所感で私は、「信頼の構築」と「自治体・職員・市民の自立」の必要性を強調しました。