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この難問を市は事業の民間への移管という方法で乗り切る。まず、最大のサービス提供事業者である社会福祉協議会の活性化に取り組んだ。岸本福祉部長は、市長の命を受けて六年間社協の事務局長を務めて事業体として軌道に乗せた。この四月には、養護老人ホームの運営を市から社協に移管している。老人保健施設は、市立病院に併設することも可能だったが、市長はあくまでも医療法人での運営にこだわった。「行政がやると人件費がかさみ非効率になる」からだ。このようにしてピーク時の九四年度に四七八人に達していた市職員数を二〇〇〇年度には四四八人に削減した(表2参照)。

 

<表2 高浜市年度別全職員数の推移> (各年度4月1日現在)

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もう一つ市が積極的に取り組んでいること。それは情報収集力の強化である。福祉自治体ユニットの自治体職員勉強会や、厚生省で毎月一回開かれている一般自治体職員を対象とする勉強会に職員を派遣。さらに若手職員を厚生省に出向させ、厚生省からも若手キャリアを出向者として受け入れるなどして介護保険や厚生行政の最新情報を収集、リアルタイムで市政に反映してきた。たとえば国や各種財団のさまざまな補助金の情報をいち早く入手し、福祉サービスの充実に活用している。

 

市役所はサービス業

 

森市長は、市長選挙に初めて出る際に、県会議員や高浜町長を務めた父から強く反対された。出馬の条件は「家業(しょうゆやみその醸造業)をしっかり見ること」だった。この約束を守り、今でも毎朝、工場を見て回っているという。「小さい企業が大きな企業と競争しても勝てない。独自性を武器にしなければ生き残れない」(市長)。

 

 

 

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