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内藤 私もそう思います。妻はあんなに脳がやられて、手足が動かなくなったにもかかわらず、喜怒哀楽の感性が残っている。アルツハイマーは一六年といいますが、こんなに萎縮したCTを見たことがないと医者が驚くんですよ。医療の限界を超えていると。でも女房の本性を大事にして接してやると必ず反応があるんです。人間の心への可能性というのは、本当に大きいですねえ。

堀田 (うなずきながら)奥様は介護保険の認定はどのように?

内藤 要介護5です。

堀田 それはよかったです。痴呆症の方の認定は特に問題がいろいろとあって、厚生省も勉強会などを始めていますが、今後の大きな宿題ですからね。

内藤 周囲の声を聞くと問題は確かに多いです。うちでも介護度5に認定されても、今までより月に数十万円足りません。それでも、私はみんなに言うんですよ。この制度は新しい世づくりの一歩なんだと。良い方向に定着していくことを願っているんです。

堀田 ぜひそうしていけるように私たちもがんばります。

 

妻の笑顔が最高の励み 脳は壊れても人間性は壊れはしない

 

堀田 内藤さんご自身のことも少し伺いたいんですが、ストレス発散はどうされていますか?最近では少ないとはいえ、夫が妻を介護する例も増えてきて、たとえば元高槻市長の江村利雄さんは著書を見るとゴルフをしたり、上手に息抜きをされていますが。

内藤 ゴルフも大好きなんですけれど、今はもう一日空けるのは無理ですねえ。仕事を辞めて妻の面倒を見始めた最初の四年間ほどは出かけていましたが、今は数時間から半日程度、出かけられるときに誘ってくれる仲間とカラオケで騒いだり(笑)。

 

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平成元年4月。内藤さんが退職して間もなくの頃。すでに妻弘子さんは痴呆症との闘いが始まっていたが、こうして夫と出かけるのを何よりも楽しみにしていた。

 

 

 

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