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二、三〇分そのままで頑として動かない。そのヘルパーさんにお願いして帰ってもらうと気が収まって家に入るんです。それでもだめな時には困って近所に住むお孫さんに駆け付けてもらうと、よいこらしょと車から降りる。何というか、痴呆といっても、異常と見える行動にも必ず原因があるんじゃないか、それさえ取り除いてやれば大丈夫なはずだと、私は信じているんです。妻の場合もそうでしたから。

堀田 奥様の行動でご苦労されていることはありませんか?

内藤 最初は戸惑ったことばかりでしたが、お医者さんに教えられ諭されながらなるほどなあと。尾籠(びろう)な話で恐縮ですが、娘がまだ家にいたころ「お父さん、あれを止めさせて」と悲鳴を上げまして。妻がトイレで使用した紙を便器ではなくてその回りや、そのうちに廊下に捨てるようになったんです。帰宅すると紙だらけ。言い聞かせてもすぐ忘れる。困って先生に相談しましたら「それは立派なことじゃないですか」と。

堀田 ほおー。

内藤 生きていく最大のキーポイントは食べることと出すこと。ちゃんと自分でトイレに行けるのだからそれだげですばらしいし、紙をどこへ持って行こうが関係ない。帰って来たら袋を持って拾ってあげてください、それでいいでしょうと。

 

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奥様との生活の日々を綴った一冊。全編にその時々の胸の内が素直に書き記されている。

 

 

 

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