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内藤 痴呆症の患者を持つ家族が必ず乗り越えなければならない壁ですね。乗り越えてしまうととても気が楽になりました。痴呆症という病気は、家の中で家族だけで対処できるような生易しいものじゃありませんでしょう。妻が歩けたころは、二人で手をつないで近所を散歩していたんですよ。

堀田 それは、すてきですね。

内藤 昔はしたこともなかったんですが(笑)、そうして歩いていると、みなさんが「こんにちは」と弘子に挨拶してくれる。それにニコッと笑って応える妻の顔を見て、隠そうとしていたことが、どれだけつまらないことだったか、思い知ったような気がしました。

 

痴呆の介護は、相手ではなく自分が変わること

 

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堀田 お話を伺っていると、本当に奥様のことを心から思われて介護されておられるのがひしひしと伝わってきます。そんな中でさらに地域で痴呆の高齢者の方を支える「虹の会」を作られて活動もされてますね。

内藤 ボランティアをやるぞといって集まったわけじゃないんです。これも痴呆の真の姿を女房に教えてもらったからです。狛江(こまえ)にも痴呆老人が一二〇名ほどいまして、行政もどなたも手を出していなかった。ならば経験した者が手を差し伸べてあげようと同志を募って六年前に始めました。毎週一回、送迎付きでデイケアをしています。

堀田 今は何名くらいで活動されているのですか?

内藤 あまり大人数にならないように、八〜一〇名くらいがちょうどいいんですね。必ず、それと同数以上のボランティアさんが集まって、舞踊や歌などみなさんで楽しく過ごしています。

 

 

 

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