堀田 (うなずく)。
内藤 掃除機のコードをソケットに差し込めずに呆然と座り込んでいたり、スーパーに行けば支払いもせずに、かごを持って帰って来てしまう。飛んで行ってスーパーの店長さんに平謝りに謝って、病気なので決して叱らないでほしいとお願いもしました。何度教えてもすぐ忘れてしまうわけです。混乱し、それぞれ悩み、特に女房の実母から厳しく責められたのは辛かったですね。
堀田 責められたとおっしゃいますと?
内藤 弘子がこんなふうになったのはあなたたち家族のせいだと。私の娘にまで言うので思わず言い合いになったこともありました。気持ちは痛いほどわかるんです。実の母親ですから余計に辛かったと思います。それでも、月日が経つうちに理解してくれるようになりました。義母は八三歳で亡くなりましたが、亡くなるほんの一〇日前まで、妻の手を握りながら温かく話しかけてくれていたんですよ。ただ、もう妻はそのころは母の死というものを理解することはできませんでしたが。
地域に助けを求めて新しい世界を知った