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幸い今回の回答者は60歳代が25.6%、70歳以上が28.2%と、高齢者が多かったところから、いくつかの項目について年齢階層によるクロスチェックを行った。その結果、窓口サービスで60歳代以上は「5分以内」を選択し、50歳代以下の「10分以内」より性急なことが分かった。またEメールの場合、70歳以上は「4時間以内」を待ちの限度とし、60歳以下の若い層の「当日中」では満足しないことがわかった。

この他にも公務員に対する批判は数多いが、これ以上言及することを控えておきたい。それほど枚挙に暇がないほどなのである。そこで視点を変え、21世紀に向けて公務員の行動の改革について調査結果を紹介したい。

 

2 これからの公務員像

 

公務員像を描く場合、研究委員会の多数意見は、国民にとって接触の機会が多いのは市町村職員、ついで都道府県職員であり、国家公務員との接触は少ないものと予想されていた。しかしB-1表に見るように、必ずしもそうではない回答を得た。また国家公務員、都道府県職員、市町村職員という公務員の区分ごとに、国民が期待する上位1〜3位の公務員のサービスは、B-3表に見るように国家公務員と都道府県職員の場合、全く同順位であった。ところが市町村職員に対する期待は大きく違い、より具体的なサービスの提供を期待していることが分かった。こうした事実を踏まえて、今回の調査から得られる「民間からみた21世紀に期待される公務員像」は、次のように要約できるのではあるまいか。

 

(1) 「全体の奉仕者」精神の発揚

 

新しい公務員制度になって半世紀、豊かな社会が実現した昨今、「全体の奉仕者」という公務員の原点に帰る国民の期待は、改めて高まっているようである。その背景には近年の高級公務員の不祥事だけではなく、政官財各界間の関係にも言及したものがあった。時勢は公務員制度の革新を期待していることは確かであるが、今回の調査を見る限り、公務員を批判するだけではなく、「公務員の役割に徹せよ」、「誇りを持って役割を果たせ」という趣旨のものが多かった。その具体的な施策としては、B-4表「公務員全体に対する国(住)民の評価」をはじめ、国家公務員に対するCシリーズの各表に詳しく述べられている。

 

(2) 新しい行政管理(NPM)の観点から

 

イギリスのサッチャー元首相などに始まる新しい行政管理(NPM)の考え方は、要するに1]行政は民間に任せるものは任せて軽量になり、しかも2]多くの施策について大局的に優先順序を決め、3]行政効率を高めようとするものといえよう。そのためには、いわゆる政治主導になると理解されている。しかしこのNPMを実施するのは行政であり、担当するのは公務員である。

 

 

 

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