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国民の側が、彼等の能力をどう使うかの問題である」と述べ、全国紙の役員を務めたN氏(74歳、男性)は、「(公務員は)国民を顧客と思えるほどに変身したとは思えない。国への思い強く、誇り高い集団であってほしい」と要望する。他方、中京の大学教授のM氏(56歳、男性)は、「一般の公務員には責任感のある正直な人が多いと思います。トップにいる人に問題があるのではないか」と、近年発生した高級公務員の不祥事のインパクトを厳しく指摘する。また基幹産業の人材開発を担当したN氏(67歳、男性)は、逆に「(公務員の)本質が変わったとは思えない」とさらに厳しい意見であった。同じように、企業幹部から大学教授に転じたN氏(60歳、男性)は、「最近の倫理規定の明確化など評価できるが意識面ではまだ甘く、浸透していない」と追求する。

 

(1) 国家公務員の人材管理

 

国家公務員の資質については、たとえば企業幹部から大学教授に就任したI氏(65歳、男性)のように、「ポテンシャルは高い」としながらも、人材管理上の欠陥を指摘する向きが多かった。特に、マスコミの幹部から大学教授に就任したT氏(69歳、男性)の「バッシングで消極化」、無記名氏の「プライドの喪失」、銀行管理者E氏(44歳、男性)の「プライドを持たせる」、基幹産業の幹部を務めたT氏(76歳、男性)の「事なかれ主義」など、公務員自身の志操の低下を愁うるものに注目した。その反面、今後の人材管理について、かつて国際ビジネスで活躍したK氏(77歳、男性)の「人材は潜在しているが、意識改革が必要」、演劇評論家から短大教授に就任したI氏(65歳、男性)の「異動が多すぎる」、社会経済紙の編集長を務めるS氏(52歳、男性)の「上司の意向を気にし過ぎる」、企業の人材開発担当から同じ分野のコンサルタントになったK氏(63歳、男性)の「課題指向と信賞必罰」など、具体的な指摘が続出した。

 

(2) 国家公務員の人材開発

 

人材開発に関しては、個々の具体策の指摘が多かったが、一応分類してみると、次のようになるのではなかろうか。まずは人材育成・開発の目標については、健康産業管理者のH氏の「ナレッジワーカー」指向が目についた。そのための意識としては、信託銀行幹部S氏の(47歳、男性)の「競争意識の導入」が目立った。さらにその対策としては、先端技術の統括責任者だったU氏(75歳、男性)の「民間との人事交流」、団体幹部I氏(64歳、男性)の「定期交流」、同社K氏(45歳、女性)の「民間の知恵受入れ」などの指摘があった。またより具体的な対策としては、在日外国企業の人事部長を務めるW氏(35歳、女性)の「30代・40代の人々の生きがい開発」と、上記大学教授のM氏(56歳、男性)の「『失敗は成功の母』として民間を見習え」という指摘とが注目された。

 

 

 

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