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さらに、貴重な自由記述のコメントを寄せていただいた方々の数は、その半数以上にのぼった。中には国内調査票に用意した「その他」の欄では足りなくて、別紙を添付されたり、その脇の空欄を使われた方も少なくなかった。調査票の裏面一杯に筆を走らせた方が数人もあった程であった。こうした事実から見て、21世紀の公務員像に対する民間からの関心の深さを、改めて思い知らされたのであった。

さてそうした自由記述のコメントのうち、筆者の琴線に触れた27方の分を要約すると、次のように要約できるのではあるまいか。ただご本人の意向とは違った引用である場合、その責任は筆者にあることを明確にしておきたい。

 

1 国家公務員の役割に関して

 

アジア・アフリカ諸国の開発協力に半生を捧げたT氏(68歳、男性)は、国家公務員に「国を守る意識」を求め、「死線を越えた戦争体験者」のH氏(75歳、男性)は、「無責任の国家から真の民主主義は生まれない」と、自らの体験を通じて公務員に対する期待を表明する。同様に銀行幹部から経営幹部に移ったI氏〈65歳、男性〉のように、「国益の観点からの(公務員の)判断」を求めるのは、戦前戦後を生き抜いた年配の方々の偽らぬ心境ではなかろうか。

さらに公務員の役割に一歩踏み込んだ意見としては、メーカー役員だったE氏の「政治不信のカバー」(68歳、男性)、中小企業トップのS氏の「政治に期待できない分、国家公務員がカバー」(55歳、男性)、途上国援助関連コンサルタント企業顧問のF氏の「行政が責任をとる体制」(73歳、男性)などがあったが、中には地元産業団体役員を務めたH氏の「公務員の自覚」(88歳、男性)など、公務員に対する期待を胸に秘めた意見の方も少なくなかった。

また、公務員に対して、大学で経営学教授のM氏(56歳、男性)は、公務員の役割としての「中立的な立場とは、最大の党派に属するのではなく、知識(恵)と科学的根拠に立った立場である」と暗に公務員と政治との関係に言及したものから、上記F氏のように公務員は「国民にとってサービスセンター」や、マスコミ関連企業のトップのH氏(53歳、男性)の「公務員はサービススタッフ」などと端的な期待を表明したものなど、意見の幅は広かった。

 

2 国家公務員に対する期待・要望に関して

 

国際版調査票の第5項目は、「公務員に対する今後の期待・要望」であったところから、自由コメントはその他の調査項目よりはるかに多かった。しかもその多くは、いわば今回の調査の結論とでもいうに値し、かつ示唆に富むコメントだった。経営トップを引退したT氏(80歳、男性)は、「世界に冠たる公務員魂を望みたい」と期待し、関西の市中銀行を早期退職し独立の経営コンサルタントとして活躍中のM氏(58歳、男性)は、「いろいろ言われているが、やはり(公務員の)水準は高く、士気も高いと思われる。

 

 

 

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