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(4) 公務における管理者の確保

 

財政再建の一環として、50歳以上の連邦職員は前記の退職促進措置(ERI)によって、早期退職が促進された。その結果、予想に反して有能な高級管理者層に早期退職者が続出した。そこで後継者の人選・開発をめぐって、中央人事行政機関の財政委員会と公務委員会とを慌てさせたという。そのためにカナダ管理者開発センター(CCMD)の活動を強化したということだったが、所詮人材の確保に関して、いわゆるグレシャムの法則の影響から逃れることはできなかった模様である。この国においては、公務員には労働3権が付与されており、給与については団体交渉による官民匹敵が図られている。こうした事情を踏まえて、すでにイギリスやアメリカと同様に、高級管理者層の給与引上げが認められ、業績給の拡充も行われた。しかし今回の面接の間に、依然として何度か高級公務員の薄給が話題になった。公務員の人材確保には、単に給与だけの問題ではないとはいえ、目に見える給与問題の重要性を痛感した次第だった。

 

VI むすび

 

この調査報告書は、短期間の現地調査の結果と、その前後に入手した各種資料とを総合して作成したものであるために、所詮は管見のそしりを免れ得ず、今後の研究に待たなければならない点は少なくない。しかし広大なカナダの整然とした首都オタワを訪問し、市内に色とりどりの熱気球が舞う実況を見たのである。ここに、この国に対する率直な感想を述べて、この報告書の結びとしたい。

それは一言にして、「カナダの21世紀は明るい」ということである。その関連指標として、この国の外国人に対する門戸開放の度合いを見てみよう。いまやわが国を含めた先進諸国においては、先端技術者の国際移動は実質的にフリーパスである。しかし一般労働者には、入国と就労に関しては何がしかの制約が課されている国が多い。ところがこの国の場合、移民受け入れの条件は極めて緩やかなようである。

 

<参考>オタワ市内タクシー運転手事情

今回のオタワ滞在中に、面接のために3度タクシーを使った。ところがそれらのタクシーの運転手は、3回とも出身国が違っていた。最初はレバノンからの避難民、次はルーマニアからの移民、最後の一人は原住民(アボリッジナル)系だった。近年大方の先進諸国で、この業種には同じような傾向があることを経験してきたが、これほどのことはなかった。

 

論より証拠、1998年のこの国における正規の手続による移民の年間入国比率は、人口1,000人につき6.3人だという。移民大国アメリカですらその半数の3.0人である。大卒以上の知識労働者を除く一般労働者に対しては、原則として門戸を閉ざしている日本の場合は、なんと僅かに0.36人に過ぎない。

 

 

 

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