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彼との面接は、14日の夜半までかかった。孫に近い年齢のカナダのこの若者を前に、彼の人生計画について詳しく尋ねたからだった。彼はすでに世界各地を放浪した上に、この国の一流大学の希望する学科への入学が決まっていたにも拘わらず、1年間入学を延期して学資を稼いでいる。当年20歳という年齢は、約2年間の入学の遅れを招いているが、この点に関しては何の拘りもない様子だった。実父は前述の通り、著名なNPO機関である公共政策フォーラムの専務理事の職にあるからには、貧困家庭の出身とは考えられない。このようにカナダ人の考え方として、高校卒業後の進路の決定は、本人次第だという。彼の祖父はスウェーデンから渡ってきたというが、カナダ生まれの父はフランスで博士号を取り、母はベルギー人で現地結婚したという。こうした国際色の強い家庭環境に育っているところから、彼は将来の国連勤務を念頭に置いていた。筆者の面接が長くなったのは、こうした私的な関係もあったからだった。

 

10 デイビッド・スチュワード・パターソン氏

 

(全国問題ビジネス・カウンシル政策・コミュニケーション担当専務理事)

スチュワード・パターソン氏とは、オタワ滞在中に会う機会は無かったが、カナダ・カンファレンス委員会のボニー・シール女史の紹介があったので、現地を離れる前に国際版チェックリストを送っておいた。8月30日に受け取った手紙により、次のような詳しい評価結果を得た次第であった。(以下同氏のコメントの全訳)。

 

【各質問に対する評価結果及び関連コメント】

 

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カナダの公務員はプロフェッショナルとして有能だが、これまで10年間、連邦政府が財政不足を避けようとしたために、かなりなストレスを受けてきた。そのために過去6年間にわたり公共プログラムとスタッフの削減、業務の民営化、給与の凍結が行われた。公務サービスの質に対する国民の評価は、多くの公務員が勤務に励んだにも拘わらず、低下してしまった。公務員は国民を価値ある顧客と扱うように努めてきたが、昨今彼らのプライドとモラールは傷ついてしまった。とくに気になるのは、上級管理者(senior managers)の給与が、民間部門における彼らのスキルからみて遥かに低い水準になっていることである。そのために、最も優れた上級管理者の多くが公務から流出してしまった。

 

 

 

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