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総合評価で最も高い評価値をつけたのは、企業の部長クラスだった。ついで元公務員だが、面接の内容を参照すると、元公務員はその経験のために、必ずしも、公務員制度の現状を肯定的に評価していない。企業の管理職は、50代から60代初めが大半で、過去30年間の経験と、現在接触する行政組織と公務員の状況とを比較して、より高い評価をしていると考えられる。経営者・役員層は、企業経営に関する公務員の行動評価が加わるから、より厳しい見方をする傾向がある。ただし、職業別では、弁護士と記者の専門職グループがそろって、高い総合評価をしている。総合評価で最も低いグループは、研究者だが、これは、公務員経験のない若い研究者の評価がとくに低いためであり、他の研究者は元幹部公務員であり、評価値はもっとも高く、したがって、研究者グループの平均をそのまま採用することはできない。

項目別の評価では、職業による違いがよくはっきりと認められる。現状の一般的評価では、弁護士と記者グループが高く、企業・団体グループがやや低いが、それほどの差はない。しかし、公務員の中立性や政治的圧力、人事管理庁や身分保障に関する評価(人事行政)では、記者グループがきわだって評価値が低く、企業グループが高い。これも、仕事と公務員の関係が、第3者的な記者の目からは中立性の要求度が高く、企業経営者の目からは、政治的圧力への抵抗度が高いということになるのだろうと考えられる。

一方で、倫理の評価では、弁護士と記者のグループの評価値が4.5ときわめて高い。逆に、企業層は、倫理に関する評価は、他の項目に比べてもとくに低い。結局、行政全体としては、企業層の評価が高く、記者層の評価は低い。その半面、公務員個人の行動に関しては、その逆になっている。

 

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VI 結論

 

国民から見たアメリカ公務員制度の評価という本調査の結論は、アメリカ公務員制度の特徴を反映して、ややアンビバレントな結果となった。全体としては、高くも低くもない評価であるが、しかし、その内容に詳しく立ち入って検討すると、興味深い評価が得られていることがわかる。

 

 

 

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