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アメリカ公務員制度の特徴の第一は、連邦と州、ローカルでそれぞれ権限を分け合うデュアル・システムである。したがって、連邦機関の所管する範囲の中で、直接普通に国民に接触する部門は限られている。そのため、「国民から見た」という点で、国民の直接体験に基づく評価は、きわめて限られている。それも、ほとんどが、郵政公社、内国歳入庁などに限定される。現場の公務員の応接などからの態度から評価できることは、そのため連邦公務員のごく一部でしかない。国民から見た公務員の大半は、州かローカル政府に属しているから、連邦公務員のイメージも州やローカルの公務員のイメージと混在することになる。

第二は、民間部門にも共通するが、公務組織にも日本と違ってフォアマン・システムがある程度は貫徹している。各機関あるいは各セクションのトップがその所掌事務に責任と権限を与えられており、その部門が期待を満たすかどうかは、所属する職員の資質ではなく、トップの指導能力に依存することになる。したがって、公務員の評価は、連邦各機関のトップの評価と重ね合わされることになる。

国民との直接接触が乏しい連邦公務員のイメージは、マスメディアを通じて形成されるから、その場合には、その機関の評価がそのまま公務員一般の評価につながる面接の内容で、IRS(内国歳入庁)やFRB(連邦準備制度)、郵政公社などの業務が改善されたことを理由に、公務員の一般的評価が高まるというのは、その例である。

第三は、連邦政府に対する国民のアンビバレントな態度が、公務員の評価にも反映している点である。国民は政府の有用性は認識しているものの、必要以上の介入は好まない。また、PAを含む幹部公務員は、その中に競争原理が作動しているが、一般のキャリア公務員は、あくまで被用者であり、競争によって自己の能力を開示し、評価されるという立場にない。そのことから、職業としての公務員が日本と違って、そもそも評価されないという事情がある。それにもかかわらず、優秀な若者が連邦組織に参入するのは、公的な業務への魅力もあるが、キャリア公務員として終身職に就くというよりも、公務員の経験をステップとするためという場合が多い。

このような限界はあるが、1970年代から始まった公務員制度の改革は、おおむね好意的に受取られている。79年の政府倫理法と89年の倫理改革法による公務員倫理の制度的確立は、公務員のイメージを改善するために大きく貢献した。人事管理庁の創設や、その後の改革、とくに人事管理業務の権限を各機関に委譲した分権政策も、連邦公務員への評価を高めている。厚い身分保障と競争のないことは、一面では、民間との比較で低く評価され、他の面では、人事行政の充実という点で高く評価される。倫理にしても、内部告発者の保護では不十分とされている。だからといって、連邦公務員の倫理が低いというのではない。

 

 

 

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