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多彩な経験を背景とした同氏の印象では、アメリカの場合、大統領、議会の議員と連邦政府のキャリア(ビューロクラット)公務員をそれぞれ分けた形で国民の認識を判断することはむずかしいという。それは政策に関わるかぎり、キャリア・サービスの公務員ではなく、行政機構のトップを構成する政治家あるいは政治任命の個人の責任と考えられるからだ。その意味では、行政組織も、結果責任を問うというアメリカの競争主義の原則によって動かされている。

そのうえで、あえてキャリア・サービスの公務員にしぼって考えれば、一般的に言って、アメリカの公務員制度はシステムとしてよく機能していると思う。公衆の信頼も高い。たとえば内国歳入庁IRSも以前には問題がある官庁とされたが、いまではよくなった。ただ、市民をどのように扱うか、個々の市民との関係をどのように構築するかは、むずかしい問題として残っている。

政治的圧力の是非にも問題がある。自分の仕事も関係があるが、たとえば、国会議員に泣きつくと、物事がうまく運ぶことがある。それは事実だ。しかし、これはいい意味でも悪い意味でも、アメリカの民主主義を具体化するシステムとして機能している。つまり、議員は選挙された公務員であり、国民あるいは有権者が政府は何をすべきかを伝えるチャネルでもある。キャリア・サービスは、任命された公務員として、議会または大統領が決定した政策を実現する義務がある。したがって、国民の政府に対する要求が、直接キャリア・サービスの公務員に伝達されるわけではない。もちろん、行政の実際では、個々の公務員の資質が大きく影響することは当然だ。その意味では、アメリカのキャリア・サービスの公務員は信頼できるといっていいだろう。また、議会は行政に対する監視犬でもある。社会の変化に対応して政府を変えるのは議会の仕事である。

倫理についての認識は、分散している。たとえば、研修の評価は5だが、秘密保持の評価は4、内部告発者の保護は、それと正反対で評価は低い。一応の保護制度はあるが、機能しているとはとてもいえないから、2だ。また、防衛産業などの例外はあるが、公私の峻別は文句なく5の評価を得る。レーガン政権に始まりクリントン政権で進んだ公務員縮小政策が、多様な面で問題を残しているが、次の政権がブッシュになるかゴアになるかによって大きく違ってくるだろう。ゴアなら、クリントンの政策は継続するだろうし、ブッシュなら大きく変わるだろうからだ。

<面接結果>

 

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