大伴家持には越中を詠んだ「賦(ふ)」(漢詩風の長歌)が三つあり、越中三賦と呼ばれています。夢幻譚にはそのうち「二上山(ふたがみやま)の賦(ふ)」と「立山(たてやま)の賦(ふ)」が、藤本嘉一氏により独唱付オーケストラ曲として作曲され、古代シーンと目覚めのシーンに自然の精霊の踊りとして取り入れられています。
「二上山の賦」は、二上山のなだらかで女性的な優しさをソプラノのための繊細な曲想で、「立山の賦」はそれとは対照的に、厳しく、高貴に、毅然とそそりたつ立山の男性的なイメージを、バリトン独唱に託して作曲されています。
二上山(ふたがみやま)の賦(ふ)
射水川(いみずがは) い行(ゆ)き廻(めぐ)れる 玉くしげ 二上山は
春花(はるはな)の 咲ける盛りに 秋の葉の にほへる時に
出で立ちて 振(ふ)り放(さ)け見れば
神(かむ)からや そこは貴(たふと)き
山からや 兄が欲しからむ
すめ神の 裾廻(すそみ)の山の 渋谿(しぶたに)の
崎(さき)の有磯(ありそ)に朝なぎに 寄する白波
夕なぎに 満ち来る潮(しほ)の
いや増しに 絶ゆること無く 古ゆ(いにしへ) 今の現(をつつ)に
かくしこそ 見る人ごとに かけてしのはめ
立山(たちやま)の賦(ふ)
天離(あまざか)る 鄙(ひな)に名かかす 越(こし)の中 国内(くぬち)ことごと
山はしも しじにあれども 川はしも さはに行けども
すめ神の 領(うしは)き坐(いま)す 新川の その立山に
常夏(とこなつ)に 雪降り敷きて 帯(お)ばせる 片貝川(かたかひがは)の
清き瀬に 朝夕(あさよひ)ごとに 立つ霧(きり)の 思ひ過ぎめや
あり通ひ いや毎年(としのは)に よそのみも 振(ふ)り放(さ)け見つつ
万代(よろづよ)の 語(かた)らひぐさと いまだ見ぬ 人にも告(つ)げむ
音(おと)のみも 名(な)のみも聞きて 羨(とも)しぶるがね
使用音楽一覧
■夢幻譚オリジナル音楽(藤本嘉一作曲)
M1 プレリュード
M2 越の天平
M4 二上山の賦
M5/7 時空変幻
M6 放生津擾乱
M8 奈古の海
M11 慶長風流
M12 岩瀬野の萩
M16 鹿鳴館ワルツ
M20 平成カタストロフ
M21 レーザーダンス
M25 春苑落花
M26 立山の賦
M27 フィナーレ
■引用音楽(伝統音楽その他)
M3 抜頭(舞楽)
M9 こきりこ節(富山県民謡)
M10 八島(能)
M13 やがえふ(高岡民謡)
M14 伏木帆柱起し祝い唄(高岡民謡)
M15 宮さま宮さま(幕末歌謡)
M17 タ日(室崎琴月曲)
M18 愛国行進曲(瀬戸口藤吉曲)
M19 海ゆかば(大伴家持歌・信時潔曲)
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