アカメは夏に4mmぐらいでアマモにつき、次の春までアマモ場だけにしかいません。他の場には絶対にいません。ということは、アマモ場という所はアカメにとっては切っても切り離せない成育場であるということがわかります。
どのようにアカメの子どもたちはアマモ場で暮らしているかといいますと、アマモの葉っぱ1枚1枚に逆立ちして、平行にくっついているのが観察できました。つまり、彼らは行動もアマモに太古の昔から適した生態を持っていることがわかります。これがなくなればアカメはいなくなるということです。
先程、水野さんから漂着物の話がありましたが、実は漂着物は物だけではなく、黒潮はいろいろな生物も運んできます。
オニカマスは、熱帯地方にしかいないカマスの仲間の稚魚です。これはヨシの枯れた茎ですが、私が冗談で「オニカマスの稚魚というのは、こういうヨシと一緒にいるのではないか」と思ってすくってみたら、本当にすくえたのです。
後で水槽で見ましたら、彼らは逆立ちしてこれに擬態しています。ということは、オニカマスの稚魚もこういったヨシがある所をゆりかごとしなければならない生態を彼らの生活の中に組み入れているということです。こういった場所がなくなれば、自然とオニカマスもいなくなるということです。
驚いたことに、世界で2番目に深いアフリカのタンガニーカ湖に、日本とよく似たアカメの調査に行ったときに、そこのアカメの稚魚も、アマモではありませんが、浅いところの植物に逆立ちして擬態をしていました。すばらしいことです。
実は、行ったときに大雨が降りまして、タンガニーカ湖に流れ込んでいる川が大氾濫を起こしました。川から大きな石ころを運んできまして、その晩、約30人の人が亡くなりました。
これは道を寸断したところです。
どうしてそのようなことが起きるのか。
タンガニーカ湖湖畔の山々は、全くのハゲ山です。1つは焼き畑農業という農業が近年盛んになり、どんどん木を伐採してしまったこと。そして、彼らは炭を木から作るので、どんどん炭を使っているということが挙げられます。
夜中に焼き畑農業をやっているところです。
彼らにとってどんなに大事かというと、私がタンガニーカ湖の波打ち際で稚魚をとっていますと、それまで子どもたちはいなかったのですが、どこからともなくわいてきて、「ムトト(魚)を買ってくれ、買ってくれ」と言うのです。
彼らにとって大事な水供給源です。可愛い女の子たちが朝の日課である水汲みに行っている所です。
タンガニーカ湖湖畔は生物の場でもあり、住民のきわめて重要な生活の場でもあります。川グソはしないとは思いますが、ここで洗濯をしたり、顔を洗ったり、歯を磨いたりしている重要なところです。
しかし、そのタンガニーカ湖も近年きわめて汚染が深刻になってきています。
(大谷) あと十数分しか残っていませんが、田島さん、前の話の追加をよろしくお願いします。
(田島) 何をしゃべろうかなと思ったのですが、2つのことをしゃべりたくなって困っています。
1つは海のこと、もう1つは森のことです。
それから、子どもたちが最後まで頑張って聞いていたので、その感謝を込めて、今、作り終わって、来年の10月に出そうと思っている絵本のカラーコピーを引き延ばして持ってきているので、それをお見せします。木の実で作った世界初の絵本です。
まず、海の話をします。
関東圏内、埼玉県のいくつかの市と神奈川県のいくつかの市で焼却灰を横浜港に毎日千トン集めます。そして、船が出て、瀬戸内海の上黒島という所に着きます。船着場に降ろすと、大きなピラミッドができます。そして、ダンプカーが来てすくってどんどん乗せます。そうしますと、海風で飛び散りますね。そのあたりの海には生物の痕跡がありません。