先程川グソの話をしましたが、実は皆さんはあまり知らないのではないかと思いますが、「清流魚棲まず」と言われまして、魚はきわめてきれいな所には棲んでいません。ある程度、いい意味で富栄養化した所に魚はいます。そういった所を、特に魚の子どもたちは成育場に、ゆりかごにしています。
今日、私が与えられたテーマは「陸域と水域との接点を魚がどのように利用しているか」という話題提供です。今日は、川と海を往来する魚について少し紹介したいと思います。
<以下、OHP併用>
川と海を一生のうちに往来する魚はかなりいますが、それを大きく分けると3つに分かれます。
(1) 川で生まれて、海を主な生活域とし、産卵のためにまた川に上っていくもの。
これを「遡上回遊」といいます。
(2) 海で生まれて、川を主な生活域とし、産卵のために下っていくもの。
これを「降海回遊」といいます。
(3) 川で産卵し、ふ化して下り、海で暮らし、直接産卵のためではなく川を上がっていくもの。
これを「両側回遊」といいます。
川と海を行き来する魚は、この3つのタイプに分かれます。
どういうものがいるかということを紹介させていただきます。
<遡上回遊>
産卵のために川に上っていく魚です。
これは魚かどうかは微妙ですがカワヤツメ、サクラマス、そして皆さんよくご存じのサケです。それから、淡水魚のウグイ。高知にもいるシロウオ。これは京都ではイサカといいますが、ハゼの仲間です。
<降海回遊>
産卵のために海に下るものには、有名なウナギ。そして、カマキリ、ガシラの親戚のような魚ですが、カジカ科の魚。高知ではアユカケといっています。なぜかといいますと、このカマキリのえらぶたのところにものすごく鋭いものがあって、それでアユを引っかけて食べているからです。
<両側回遊>
産卵のために上がったり下がったりする魚ではないものとしては、皆さんご存じのアユ。それから、イトヨという、トビウオやタツノオトシゴなどの親戚の魚です。そして、先程のカマキリ(アユカケ)とよく似たカジカ。これは高知ではほとんどいなくなりました。そして、ヨシノボリというハゼの仲間です。皆さんが最もご存じなのはアユだと思います。
では、ここで○×をしたいと思います。
14] アユは5年以上生きるかどうか。生きると思われる方は○、5年以上も生きないと思われる方は×を出してください。
さすがに高知の方ですね。よくご存じです。
アユは「年魚」と言われまして、たった1年しか生きることができません。
そして、アユは陸の魚と思われているかもしれませんが、一生の約半分、子ども時代は海で暮らしています。実は、それを発見したのは私です。
もう1つ、先程の3つには入らない、海と陸の間で一生暮らしている魚がいます。
まず、ボラの仲間のシラウオ。これは高知にはいません。それからスズキ。こういった魚が、子ども時代に海と川の間を何らかの場所、何らかの形で、緩衝域として暮らしています。