日本財団 図書館


097-1.gif

木下泉

 

先程川グソの話をしましたが、実は皆さんはあまり知らないのではないかと思いますが、「清流魚棲まず」と言われまして、魚はきわめてきれいな所には棲んでいません。ある程度、いい意味で富栄養化した所に魚はいます。そういった所を、特に魚の子どもたちは成育場に、ゆりかごにしています。

今日、私が与えられたテーマは「陸域と水域との接点を魚がどのように利用しているか」という話題提供です。今日は、川と海を往来する魚について少し紹介したいと思います。

<以下、OHP併用>

 

川と海を一生のうちに往来する魚はかなりいますが、それを大きく分けると3つに分かれます。

 

(1) 川で生まれて、海を主な生活域とし、産卵のためにまた川に上っていくもの。

これを「遡上回遊」といいます。

(2) 海で生まれて、川を主な生活域とし、産卵のために下っていくもの。

これを「降海回遊」といいます。

(3) 川で産卵し、ふ化して下り、海で暮らし、直接産卵のためではなく川を上がっていくもの。

これを「両側回遊」といいます。

 

川と海を行き来する魚は、この3つのタイプに分かれます。

どういうものがいるかということを紹介させていただきます。

 

<遡上回遊>

産卵のために川に上っていく魚です。

これは魚かどうかは微妙ですがカワヤツメ、サクラマス、そして皆さんよくご存じのサケです。それから、淡水魚のウグイ。高知にもいるシロウオ。これは京都ではイサカといいますが、ハゼの仲間です。

<降海回遊>

産卵のために海に下るものには、有名なウナギ。そして、カマキリ、ガシラの親戚のような魚ですが、カジカ科の魚。高知ではアユカケといっています。なぜかといいますと、このカマキリのえらぶたのところにものすごく鋭いものがあって、それでアユを引っかけて食べているからです。

<両側回遊>

産卵のために上がったり下がったりする魚ではないものとしては、皆さんご存じのアユ。それから、イトヨという、トビウオやタツノオトシゴなどの親戚の魚です。そして、先程のカマキリ(アユカケ)とよく似たカジカ。これは高知ではほとんどいなくなりました。そして、ヨシノボリというハゼの仲間です。皆さんが最もご存じなのはアユだと思います。

 

では、ここで○×をしたいと思います。

 

14] アユは5年以上生きるかどうか。生きると思われる方は○、5年以上も生きないと思われる方は×を出してください。

 

さすがに高知の方ですね。よくご存じです。

アユは「年魚」と言われまして、たった1年しか生きることができません。

そして、アユは陸の魚と思われているかもしれませんが、一生の約半分、子ども時代は海で暮らしています。実は、それを発見したのは私です。

もう1つ、先程の3つには入らない、海と陸の間で一生暮らしている魚がいます。

まず、ボラの仲間のシラウオ。これは高知にはいません。それからスズキ。こういった魚が、子ども時代に海と川の間を何らかの場所、何らかの形で、緩衝域として暮らしています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION