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砂遊びも大事な企画のひとつです。砂もつれになって何かを作って、それが芸術になるのです。そういうことをしている内に、ふるさとの自然を肌で感じたりします。

ビーチコーミングという言葉を聞いたことがありますか? 海岸には海の向こうから色々な作品が流れてきます。ビーチコーミングは、漂着物を拾い集めて鑑賞したり、コレクションしたり、アートの材料として活かしたりして楽しむことをいいます。浜辺の清掃にもなりますし、夢中になって歩いている内に結構いい運動になって、非常に楽しいです。

このビンはその途中で見つけたものですが、表面にエボシガイがたくさん付いていて、長い間の漂流を物語っています。本物のダイヤの指輪を拾ったこともあります。めったにありませんが、こういうものを拾ってしまうと、どこからどうして流れてきたのだろうと、思わず色々想像してしまいます。

ただ、作品はきれいなものばかりではなく、点滴のビンや化学物質の入ったボトルなど、危険なものもたくさん流れてきますので、拾うときには注意が必要です。

浜を歩いていると、プラスチックごみの多さに驚かされます。外国の文字が入ったペットボトルやシャンプーの容器、それからビーチサンダルの型をくり抜いた周りの枠だけが流れてきたり、不思議なものをよく見かけます。

外国からのごみがこれだけたくさんあるということは、どこかの国の海岸に日本からのごみがたくさん行っているはずですから、恐ろしくなります。世界は海でつながっているということを、あらためて考えさせられます。

きれいに並べるとかわいく見える100円ライターは、砂浜美術館コレクションに山のように所蔵されています。併せて分解されないタバコのフィルターもたくさん浜に落ちています。

また、砂の上を注意して見ると、米粒のような小さなつぶつぶがたくさんあります。これはレジンペレットという物質で、プラスチック製品の中間材料になるものです。工場から流出し海を汚染しています。以前、大方町でも5m四方で200粒も見つけたことがあります。これは分解されないだけではなく、PCBなどの有害物質を吸着したり、中から環境ホルモンの一種が溶け出すこともあるそうで、非常に影響が恐いものです。鳥や魚やウミガメが誤って飲み込むと、消化されずに胃の中にたまり、そのまま死んでしまうこともあります。入野の浜に産卵しに来るアカウミガメも、ときには死がいとなって漂着します。死んだアカウミガメの7割がビニールを飲み込んでいたという話も聞きます。

大雨の後、入野の浜には四万十川から流されてきたごみが堆積します。川舟が流れ着くこともあります。ヨシやタケに紛れて、プラスチックごみも一緒に流れてきています。

 

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ごみの山を見るとどうしても悲観的になってきてしまいがちですが、砂浜美術館では、それを嘆くだけでなく、ごみに好き勝手な解説を加えて「漂流物展」という催しを開き、皆さんにご覧いただいています。

 

 

 

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