3月頃にはコブシの花が咲きます。あれは真っ白で、本当にきれいです。4月になると200本くらいあるヤマザクラが咲き、ぼんぼりがあそこ、ここと灯ったように、ライトアップされたように雑木林、谷間全体が明るくなります。特別にいい景色ということではないのですが心をなぐさめてもらえる、今流行りの言葉で言うと「癒される」ような景色の場所でした。
ところが町長が、この人は悪い人ではないと思いますが、「田島さん、あそこは未利用地なんです。あそこから僕たちは1銭もお金を儲けていない。あそこにいろいろな人が土地を持っているが、もうかっている人は1人もいない。あなたは勝手にヤギの餌を取りにいってちょっとは恩恵をこうむっているかもしれないが、あそこに処分場を造って、埋め立てた跡を平地にして、そこに図書館や美術館や文化会館をつくりたい。文化の森構想だ」と言いました。
しかし、処分場の跡地にそのようなものはできないのです。それは埋め終わった今、やっと気がつきました。確かに人間にとっては未利用地かもしれませんが、動物たちは利用していたし、僕たちはそこへ行くことで心が癒されるわけだし、そこからきれいな水が湧いて川が始まっているわけですから、逆に言えば、人間がいかがわしいことに利用してはいけない場所なのです。そして、それがずっと海につながっているわけです。
僕はその時まだ化学物質のことを考えていませんでした。1984年ですから、1970年代にアメリカでプラスチック廃棄物の埋め立て場からダイオキシンが発生する事故(ラブキャナル事件)が起こり、すでに流産や発ガンなどが起こっていました。そういう情報すら持っていなかったので、自然破壊だけで反対の気持ちになりましたが、村がみんな賛成しているので反対できなかったし、反対運動そのものが起こりませんでした。
ところが、13年間の予定の埋め立て地が6年で満杯になりそうだということで、第2処分場を造らせてくれと。今度は反対しなければいけません。
そしてその間、僕らは有害化学物質のことがわかってきました。ごみを燃やせばダイオキシン等の有害物質ができます。「家庭から出てくるごみには毒などはないでしょう」と言われましたが、実は重金属類(鉛やヒ素、カドミウム、六価クロム、水銀など)等いろいろな有害物質があります。そして、日本ではそれらをごちゃ混ぜにして燃やしてしまいます。そう言うと、日本だけでなく外国でも燃やしているだろうと思われるかもしれませんが、ほぼ日本だけと考えていいです。世界中の焼却工場の70%がこのせまい日本列島にひしめいています。あとの30%がアメリカ大陸とヨーロッパ・アジア大陸、オーストラリアなどにあり、日本で世界中のダイオキシンの3/4くらいを作っているのではないかと言っている方もいるぐらいです。それが水源地に埋められているのです。第1処分場は日本のモデル型処分場として造られ、これと同じものが全国に2千ヶ所できてしまいました。
第2処分場は必死になって反対しました。この反対運動については色々書きました。本を持ってきましたのでぜひ買ってください。本の売り上げの純益と印税が100%処分場反対運動に使われています。
ごみ処分場が高知の日高村に造られる計画が着々と進んでいます。あそこにも僕は2回行きました。本当に清らかな水が流れる所で、あの下の方で高知市の水道水を取っています。ですから、自分たちのごみがごみ汁になって、ブーメランのように戻ってくるわけです。あそこは本当にいい場所です。九州の久留米市もあれに近い感じです。全国色々な所で日の出町と同じ処分場ができようとしています。そして、処分場の底のゴムやポリエステルの遮水シートが破れて、地下水の汚染が始まっています。
ごみを燃やした毒の灰を搬入して、その日の内に埋め立ててしまう、サンドイッチ方式というものがあります。これは安全だと言っていますが、埋め立てる前にすでに焼却灰が舞い上がるのです。9:00から搬入が始まり、土をかぶせるのが15:00頃ですから、その間森の中の大きな処分場に直射日光が照りつけると、草1本生えていないので、地面の温度が急激に上がって上昇気流が起こります。そしてダイオキシンなど色々な物質が入っている細かい灰の粒子、そういう毒物が舞い上がる。そして谷風が吹く。