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包装の話がありましたが、包装紙を作っている会社があるのです。その人たちは、いかにコストを下げるか、大量生産するかを競って作っています。そういう社会の価値観を変えないとよくならないのではないかと危惧しています。

特にケビンさんは世界をご存じなので、ヨーロッパの話も出ましたが、アメリカの大量生産型の経済を真似をしている日本に、何かアドバイスなり、ご意見をいただければと思うのです。

 

(ケビン) 多分、どの人間も豊かさを求めています。でも、人によって、また国によって、時代によって、豊かさというものが何であるかはだいぶ違います。これこそが価値観だと思うのです。

日本は戦争で完全に経済が破壊されて、終戦後、急に成長してきました。だから1950年代から1960年代の価値観は、とにかく小さくてよいから家を持ち、その家の中にテレビと冷蔵庫と洗濯機ぐらいは置きたいという豊かさでした。

そして、そこからバブル時代に入って、日本人は少し酔ってしまったと思うのです。自分がどこかに別荘を持ち、それに投資すればお金がたくさん戻ってきて、自分が資本家になって、ものすごい豪華な暮らしになるという価値観が出てきたのです。

バブルが破壊されたのは、もちろん景気が悪くて不便もありますが、これこそ価値観が変わり、豊かさをもう一度定義し直すチャンスでもあるのです。つまり、豊かさというのは、意味のある生活・人生を、快適な中で過ごすことだ、という価値観が広がればよいと思うのです。

アメリカは日本とは少し比べにくいのですが、やはりアメリカも、豊かさについては、生活環境が一番の目安になってきたと思うのです。つまり、自分の住んでいる周りの環境が快適であるか、または、自分がそれを楽しむ時間があるか、それこそが豊かさだ、という価値観が成り立っていると思うのです。

多分、ヨーロッパにはもっと早い時期からそういう価値観が広まっていると思いますが、これから日本にもやって来ればよいと思います。

そうすると、日本は本当に田舎の時代を迎えることができると思うのです。

時間がなくなってしまいました。話があちこちに飛んでしまって、ごめんなさい。でも、まとめることはないと思うのです。

僕の最後のメッセージとして、日本で農業なり、漁業、林業で働く人々は、自分のしていることに対して、ものすごく誇りを持つべきだと思います。

そして、そういう場所にある生活・暮らしは日本だけではなく、世界にとっても貴重な遺産だと思います。これから、我々人間が地球の自然と仲良く暮らしていくために絶対に必要な知識と知恵が、その暮らしの中にはあると僕は確実に思っています。

最後に、皆さん、一言ずつお願いします。

 

(三浦) あまり漁業について知識もないくせに生意気なことを言って申し訳ありませんが、最後にひとつ、漁業をしておられる方に質問したいのです。

うちは10年来有機農業をやってきましたが、先程から出ていた化学物質等に危機感を持っています。漁業の場面でも、有機スズが定置網や船底に使われているのではないか、養殖にはホルマリンなどを散布しているのではないかという報道もあるわけです。だから、漁業の方も、農業の有機栽培同様、有機方法というのか何かわかりませんが、そういったことができないでしょうか。

私は米や野菜の方は生産者ですが、魚に関しては消費者です。消費者の立場から言うと、確実な情報がないので、漁業の皆さんにその辺の情報をはっきり教えてほしいという気持ちがあります。海洋汚染で、イルカやクジラの肉がPCBで汚染されているという記事が出ました。PCBは各国が全部回収したのですが、唯一日本だけが回収せずにそのままどこかに埋め立てたのではないかと言われています。やはり自分たちが作って売ったものに対して、売られた方はどうするのかを考えてほしいと思います。

循環型社会形成推進基本法という法律もでき、消費者、企業、行政がいろいろな立場で協力し合おうということなので、その辺で2つほど、お考えなり正確な情報があれば、また教えてもらいたいと思います。

 

 

 

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