事業の仲間でサーフィンをする彼らは、自分たちが一番楽しみたい所をきれいに保ちたいという思いで、自発的にクリーンアップをしていました。
私も自分が釣りをするための海や足場を汚さないように、例えば、糸を切った場合は自分で持ち帰ることを心がけています。
とにかく、自分の生活でも職業でもそれがなければ生活が成り立たないのだ、という恩恵に対する感謝の気持ちや、循環していずれは自分のもとに何かの形で仕打ちが戻ってくる、という気持ちを皆さんが持つようになれば、法規制をする前に、何らかの動きがもっと大きなものになるのではないかという気がしています。
(ケビン) 松倉さんは磯釣りをするのですか。
僕の趣味は歩くことです。山を歩くより、里を歩くのが好きです。例えば、田んぼや畑の間、海岸に沿って歩くのも好きです。
そして、日本の海岸を歩くと、磯釣りの人気のポイントが数十メートル先から臭いでわかります。たくさんの人が磯釣りをしている周りは必ずごみに圧倒されています。それだけではなく、釣り上げた魚がクサフグやキタマクラのような価値のない魚だったら、それを放さずにそのまますぐ側で死なせるのです。僕の住んでいるあたりの利根川や手賀沼、印旙沼もそうです。魚を釣る人がたくさんいる場所は、ごみの量ですぐわかってしまうのです。もちろん松倉さんのようなまじめな方もいらっしゃいますが、どうも全体的にそうです。
日本では、海辺の釣りは全く許可なしでできますし、何をしてもほとんど規制もありません。それについてどう思いますか? 日本の釣り制度をもう一度考え直す必要はないでしょうか?
(松倉) 幸いにも、私は餌釣りではなくルアー釣りが多いので、キャッチ・アンド・リリースをしていますが、釣りをする仲間の中でも、マナーの悪さへの自問自答というか、雑誌にも投稿されたり、釣具屋さんなどでも啓発をしておられることがあります。釣りをする方どうしで、自分たちの遊び場をクリーンアップしようという統一デーを設けたりしている動きはあるのです。
臭いがするとか、雑魚をそのままにしてしまうというのは、まだ浸透が足りないのが一因だと思いますが、こういった動きを見ていると、今は過渡期ではないかという気がしています。
(三浦) 今までのやりとりについて、私は農業をしているので、視点を変えて農業の立場からお話しします。
農業では、自分の農地に対して固定資産税を払います。つまり、自分の所有した大地です。だから、そこで収益を上げるため、再生産がきくように大事に土を扱います。
その点、漁業の方は税金は多分払っておられないと思うのです。そして、育てるのではなく、言葉は悪いですが、略奪というか、そこに来たものを獲るということなので、生業の出発点が違うのではないかと思うのです。
漁業の方も、天に、神様には感謝されるでしょう。私たち農民もします。けれども、元々は私たちが汗を流してその土地を大事に管理し、来年も収穫がありますように、ということなのです。
だから、自分の海と言いながら、簡単にそういったものを捨てられるということは、農業と漁業ではずいぶん出発点が違うのではないかと思います。
(ケビン) それもありますが、実は日本の漁業は、世界の中でも珍しいやり方があります。
それは漁業権、特に第一種共同漁業権です。つまり、日本の沿岸の沖から1kmぐらいまでは、全て漁業権が設定されているのです。そして漁業権が設定されているところでは、漁業権を持っている漁師たちしか漁ができないのです。
ですから、土地は所有しないけれど一応その土地が生む資源の独占利用権を持っています。他の国にはこういうことはありません。日本の漁業者は非常に恵まれた環境なのです。僕の経験では、その面で非常に海を大事にしている漁師たちも結構います。