ところが、少し汚くなると河口の方にも全然入りません。したがって、魚のすめる川にすれば、相当水質もよくなるという結論は出るのです。ところが、なかなかそれに到達できないのが実態です。
(ケビン) それでは、海洋汚染防止推進のシンポジウムですから、ごみ問題そのものについて話したいと思います。
日本は半世紀の間に、全くごみを出さずに全てのものを一番よく利用する国から、とにかくごみをどんどん出す社会に変わってきたと思うのです。
例えば、僕はチョコレートクッキーが好きで食べ過ぎて太ってしまったのですが、いつもびっくりするのは、日本でクッキーを買うとまず箱があって、それを開けると今度はクッキーが1個ずつプラスチックに包まれています。それにすごく驚きました。
この辺はちょうど外国からのごみが流れてくる場所ですが、逆に、太平洋のど真ん中にミッドウェーアイランドという小さな島があり、アメリカの国立公園になっていますが、そこで繁殖する鳥が困っています。ごみがたくさん流れてくるのでそれを食べて満腹になり、普通の餌を食べなくなって死んでしまうのです。そのごみは日本のものが非常に多いのです。なぜなら、黒潮に乗ってくるからです。ここには対馬海流に乗ってくるごみはありますが、逆に向こうには日本が出したごみが流れていくのです。
世界的な問題ではありますが、日本国内から見てどうして日本人がごみを出すようになったのか、これからどのように出さないようにするか、どう考えていらっしゃるのでしょうか、安達さん。
(安達) お菓子の包装が過剰であるといわれましたが、スーパーへ買い物に行くと、本当にどれひとつとっても色々な包装がしてあります。
婦人会や漁協婦人部では家庭から袋を持っていってスーパーの袋はもらわないで帰り、スーパーの方も袋を持ってきた人には何点かのおまけをしてくれるようにしています。
贈答品にしても、以前はいろいろと包装をしていましたが、やはりごみが増えると処理に困りますので、過剰包装をやめるようになってきています。
(ケビン) 安達さんに少し厳しい質問ですが、僕はよく日本の漁港を回りますが、悲しいことに、漁師たち自身がかなり海にごみを捨てているような気がします。
例えば、漁港の中を見ると、お酒の一升瓶やジュース缶、たばこの吸い殻ももちろんあります。
山に行くと、フライフィッシングという、昆虫を擬態するおとりを使った釣りをしている人は、最近、必ずたばこの吸い殻を入れるものをつけています。つまり、川の恵みを受けているから川にはたばこをポイ捨てすることはないのです。
僕から見れば、海の清掃運動は漁師たち自身から始まらないといけないと思います。町の人が漁港に行って、そこに漁師たちがごみを捨てているのを見ると、一番海を大事にしているはずの漁師たちもポイ捨てしているから、我々はもちろんしてよいと考えると思います。
少し厳しい質問ですが、全漁連などで、すべての日本の漁師たちにシンボルとしてたばこ入れをつけさせて、海に出ることなどは考えられませんか?
(安達) 今はたばこを吸う人はだいぶ少なくなったと思いますが、私のところも子どもは吸いませんが、主人は吸います。家で叱られると外に出て吸って、吸い殻をポイ捨てします。
自分はそうなのに、他人がしていると「あいつ、たばこを海に捨てた」と言うのです。私は「おかしいな、自分もしているのに」と思うのですが、やはり、自分たちからごみのポイ捨てをやめていかないといけないと思います。人がしているのは本当によく目につくものなのです。
(ケビン) 漁師たちは海の代表者であって、かなり厳しい目で見られていると思うのです。
松倉さん、海のごみについてはどうですか。
(松倉) 私も海釣りをよくします。子どもを連れて行き、たばこを吸うので携帯灰皿を持っていって、吸った後にそこに入れています。すると、子どもがなぜかと聞くので、この事業をしていましたから、これこれこうだと言っている横で、船から漁師さんがおりてきてポイと捨てていったことが何度かあり、親としてそれを説得する力が足りなかったことがあったのです。