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(ケビン) 松倉さんの事業では、高校生がいろいろ活動していますが、僕がいつも思うのは、リサイクルや清掃によって環境がよくなったあと、その環境をどのように活かせばよいのかです。子どもたちを外で遊ばせたり、またはよくなった環境の中で何かさせたりすることは可能でしょうか?

 

(松倉) 先程、日本では水系の資源が豊かで、当たり前のように使っていたというお話がありましたが、クリーンアップをしてきれいになった私たちの郷土が当たり前になっているから、すばらしいことに気づかないという点があると思うのです。

そういった形で自然に触れておけば、高校生たちがいったん進学や就職で都会に離れていっても、改めてこの土地のすばらしさを認識するときが来ると思います。

現実に、私も高校まで益田におりましたが、海のあの青さに全く気づきませんでした。ところが、神奈川県の大学に行き、有名な湘南海岸に行ったらとんでもない茶色の海だったのです。「うちの海はこんなにすばらしい海だったのだ」と気づくひとつの契機となったらよいと思います。

また、あの年齢の段階から、こういう大きな事業・イベントを参画者のひとりとして成し遂げたという自信と勇気を持ってくれることが、ひいてはこの町にUターンしてきたときのまちづくりの原動力になってくれるのではないかと期待しながら、活動しています。

 

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松倉幸正

 

(ケビン) 日本の地方、漁村・農村・山村は、若い人が出ていき、人口が減って、おじいちゃん、おばあちゃんが残るという問題が全国的にあります。日本人は終戦後、急に暮らしが豊かになり、皆都会にあるキラキラするものにあこがれて、自分の生まれたところを出て都会に集まっていきました。

でも、戦争から半世紀以上経って、自分が生まれた所のよさや、大都会で生まれても生活環境のよい所のよさを見直して、それを求めるという動きがもうそろそろ出てもよいと思います。どうでしょうか、それは見えてきましたでしょうか。

三浦さん、弥栄村では、若い人の村の環境や村に対しての考え方・意識は、最近になってだいぶ変わってきましたか?

 

(三浦) 弥栄村の風土は、長男文化です。だいたい長男は保守的な育て方をされていますので、新しいことを起こすのはなかなか難しいのが現実です。

弥栄村も定住政策として村外の方がかなり住むようになりましたし、お嫁さんたちは文化が違う町から家に入ったわけですから、国際交流の見本です。

女性は、おそらくどこの国に行ってもすぐ通用するでしよう。男性は、長男の場合、あくまでも守りであり、家風だというのです。今、環境問題はすべて命につながりますので、どうしても女性の活躍が多いのです。男性はやはり経済性の方に行きますし、とりあえず家を守るということで、新しい価値観を入れることは難しいです。

 

(ケビン) アメリカの田舎はものすごい田舎です。日本の田舎とは比べものになりません。日本のひとつの県の面積の中に、いくつかの村がぽつんぽつんと置いてあるような田舎があります。

けれどもアメリカでは、地方・田舎・大都会の間の人々の流れは結構あり、両方通行です。つまり、田舎から地方都市、地方都市から大都会に行く人もいますが、その逆に行く人もいるのです。大都会で生まれてその生活環境が自分に合わなくて、地方都市に行けばもっとのんびりできる環境があり、田舎に行けば本当に自然の中で暮らせるので、都会を出てそちらに行くことがあるのです。

 

 

 

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