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事例発表1] 「海!私たちだけのものではない」

安達美智子(浜田市漁協婦人連絡協議会副会長)

 

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浜田市(島根県西部)の海岸は、日本海に面し、浜田海岸県立自然公園に指定され、浜田港を中心に島々が点在し、岩礁地帯、砂浜地帯と多様な海岸線で、風光明媚な所として知られ、四季折々に人々の心に安らぎを与えております。特に夏季には県外からの観光客、海水浴客が訪れる所です。

また、古くから漁業の町として栄え、多くの船が新鮮な魚を水揚げしています。

しかし、近年の海岸汚染はこの浜田海岸にも見られ、遠く外国から海流に乗って漂着するごみが多く、私たち漁協婦人部も環境整備運動を行っています。

そんな時、海と渚環境美化推進機構(マリンブルー21)の依頼により、平成6〜10年、海と干潟の定点調査を実施しました。この調査は、科学的データに基づき継続的に観察調査し、把握することにより、部員をはじめ、周辺住民、来訪者にPRし、恒久的な環境保全を図ろうとするものです。

調査の場所は市内4か所、漁協本所下(元浜町)、瀬戸ケ島の水産試験場前の橋、浜田川の河口、周布川の河口で、1]気象、2]水質、3]ごみ、4]その他(水鳥や魚が泳いでいるか目視観察等)を調査しました。

その結果、ごみはビニール類とかプラスチック類、木屑などで、海岸ごみの一番の特徴であるべき海草類等はあまりありませんでした。ビニール類、プラスチック類は日本製のものもありましたが、外国の名前の入ったものも多量にあり、驚きました。

そして感じたことは、浜田川が意外ときれいなことでした。

以前の浜田川は、汚水やヘドロによる泡がいつも川面に浮いていて、ものすごくくさいにおいを発していました。これは家庭排水だけの問題ではなく、工場の汚水の流出が大部分であったと思われます。

工場が移転したことと、市民の汚染に対する意識の変化により、現在はコイが生息する川になっています。

川はきれいになっていましたが、大雨が降ったり上流で崖崩れが起きたりすると、川岸のごみや木等が、海に流れ出してきます。海水浴に来た人たちは、海岸ではごみを整理して持って帰りますが、帰宅途中で川や山に捨てる場合もあるようです。大雨が降ったりした場合、上流はきれいになるかもしれませんが、私たち海を生活の糧とする漁業者は大変な痛手を被ります。漁網に入るものが魚ばかりでなく、流木やごみだったりして、網や船体を傷つけます。

昔、浜田港は天然の良港と言われていました。しかし、現在は埋め立て工事が行われ、防波堤がいくつも沖につくられ、漁港の中は雨の降る前など風向きによって大変な異臭を放つことがあります。

最近テレビで海底のごみ「ヘドロ」を放映していますが、浜田でも市場近辺の海岸に以前はワカメ等の海藻がたくさん生えていたのが今はあまりありません。そればかりか、海底には自転車、びん、空き缶等々、とても魚がすめるような状態ではないと思います。そして、以前はすぐ近くの桧ケ浦へ行けば、広い海を目の前にして海水浴等を楽しむことができましたが、現在はその海水浴場もなくなりました。

 

 

 

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