こんにちは。ショート・ケビンです。ケビンと呼んでください。よろしくお願いします。
座って話していいですか? どうもありがとう。
(椅子に座って)極楽、極楽。
僕は色々な所で講演会をしますが、ある日気がつきました。どうして皆さんが座っているのに、僕だけが立ってやらなければならないのか不思議だな、と思いました。ですから、座らせていただきたいな、と思います。
今日のテーマは「日本の自然とくらし」です。
でも、そこに入る前に、自分について少しお話しさせていただきたいと思います。僕はアメリカ人で、1949年(昭和24年)、アメリカの一番大きな大都会ニューヨークで生まれました。ニューヨークの中のブリックリンという、日本でいえば下町、本当の大都会の中の大都会、そういうところで生まれました。
アメリカの夏休みは丸3か月です。6月の半ば頃から9月の初め頃までは夏休み。僕の家族は毎年その夏休みに大都会を出て、近くの田舎で過ごしました。田舎といっても、ニューヨークから車でわずが1時間の所ですが、ニューヨークとは全く別世界でした。そのころは酪農が盛んな町でした。ですからなだらかな牧草地があって、その牧草地の間に浅い池とかリンゴ畑とか雑木林がありました。アメリカの里山といってもいいかもしれません。
そして、中学校に上がったときに、その田舎の町に引っ越しました。僕の親父は3年前に亡くなりましたが、四十何年間ずっとウォール街の銀行で働きました。ニューヨークの典型的なサラリーマンでした。でも、自分もニューヨークで生まれ育ちましたが、やはり子どものことを考えると、ニューヨークのような大都会はあまり環境がよくない。ですから、どうしても自分の子どもはもっと環境のよいところで成長してほしいという強い気持ちがありました。そこで、田舎に家を買って引っ越ししました。親父が毎日車で片道1時間半ぐらい通勤して、かなり大変でしたが、そのおかげで僕と僕の弟はその田舎町でのびのび育ちました。ほとんど毎日あちこち駆け回りながら、いたずらしたり遊んだりして、たぶん昔の日本の田舎の暮らしと同じようなものだったと思います。
僕はそういう田舎で大きくなり、ずっと小さい頃から探検家になりたいという夢を持っていたのです。その頃僕はアラスカとか、南米のアマゾン、熱帯雨林とか、誰もいない本当に原生自然を探検したいと思っていました。でも、今考えると、子どもの頃は毎日自分の田舎の町を探検していたのです。しかし、その頃はそういう意識はありませんでした。
僕から見ると、これが田舎の暮らしとか地方の暮らしの大きな課題とか問題とか障害なのです。つまり、そこに住んでいる人々は住みなれているから、自分の住んでいる場所のよいところはなかなか意識しないのです。でも、周りの自然が破壊されるとか、すごい開発が来て暮らしている所がなくなるとか、その時になって、「あれはよかったな」とやっと思いつくのです。でも、その話は後にします。