陸奥湾の場合、いかに夏を越すかという技術をうまく利用していかなければいけません。例えば、水深の深い、水温の低いところに置いて大きくするとか、そういうことをした方がいいのですが、それはなかなか難しいです。浅いところにしか施設を持っていない人は無理だということもあります。一般に西側は対馬暖流の影響を受けますので、水温が高い、死にやすいというリスクがかなりかかります。そのリスクを回避してやればいいのですが、リスク回避より、業者の頭には「ゼロになってしまうと終わりだ、それより早く出してしまった方がいい」という意識があるのです。
(橋本) やはり漁場環境の問題があるのですね。
(小坂) ただ、海が汚れているからとか、そういうことではなく、水温的な問題です。
今、県としても、漁業団体としても、岩手、宮城の貝に負けないような大きい貝を出そうという運動をしています。技術的な問題をクリアして、大きい貝を作ろうという運動はしています。
≪質問票5] → 小坂≫
陸奥湾の植物プランクトンをホタテが食べ過ぎてしまっては動物プランクトンの発生に影響しないか。
つまり、陸奥湾内の他の魚類の成育に影響がないのか。
(小坂) 我々もそこまで詳しく調べていません。動物プランクトンがいくらあって、それが魚類にいくら影響するのかという細かい生態系モデルをやるまでにはなっていません。
今年から少し、湾全体の植物プランクトンの生産量と動物プランクトンの関係、要するに、陸奥湾全体でどのくらいのホタテの生産を上げれば一番陸奥湾に適した環境を維持できるか、ということを調査しています。
≪質問票6] → 小坂≫
ホタテ貝の餌になるプランクトンの栄養が海底、つまり泥から供給されるとすれば、ホタテ貝の濾水能力と考え合わせてみても、泥を増やして、ホタテをもっと養殖すればいいのではないか。
(小坂) 植物プランクトンが栄養、肥料とするのはリン、窒素なのですが、泥の有機物は肥料になる前のもの、分解される前のものがほとんどです。それがうまくバクテリアや底生生物などでリン酸やアンモニアなどの細かいものに分解されて、それが上に上がってきてくれるといいのですが、分解されないままそれが下に沈んでいると、それはただの汚染です。
≪質問票7] → 小坂≫
ヒトデは陸奥湾の生態系に影響があるのか。
(小坂) ヒトデは今、陸奥湾で問題になっているのですが、ヒトデといっても皆さんが海岸で見るようなイトマキヒトデではなく、もっと深いところにいるヒトデです。ニッポンヒトデという足だけで30cmくらいあるヒトデなどです。そのようなものがホタテを食べてしまいます。ホタテの外敵なのですが、それが今かなり増えています。
ホタテが食べられていますから、これを駆除しなければいけないということで、県で補助をしてやっていますが、基本的な生態がよくわかっていません。世界でもヒトデを研究している人はあまりいません。ですから、来年あたりから我々もその生態を研究して、いかに効率的に駆除できるかということを検討していきます。
(橋本) 質問票は以上です。
それでは、今までのお話の補足、最後にこれだけは言いたい、ということをお願いします。