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西田修三

 

≪質問票3] → 西田≫

日本海の水は栄養塩が低く、基礎生産力が低いと思う。それに対して、太平洋の水は塩類が富んだ水で、陸奥湾の海水に太平洋の水が 影響することはないのか。

 

(西田) 一般に日本海、太平洋を問わず外洋性の水は栄養塩を多く含んでいます。

私たちが観測しています大阪湾を例にとると、紀伊水道から供給される栄養塩は、陸域から流入する栄養塩、つまり汚濁負荷と同程度であるという試算もあります。

つまり、多くの窒素やリンが海からも供給されているのです。生態系から見ますと、海や陸から供給される栄養塩をプランクトンそして魚介類が摂取し、物質の循環がなされ、バランスしているのです。そのバランスが崩れると、おかしなことになります。

太平洋の水と日本海の水は、当然ながら組成は異なり、親潮系の方が豊富な栄養塩をもっていますが、栄養塩の供給源としては同じです。講演の中でもお話ししましたが、衛星データ、実際の流動観測、そしてシミュレーションの結果を見ても、太平洋の親潮水が津軽海峡を逆流して陸奥湾にまで流入するという状況は今のところ見られません。

仮に、流入するとなると、異なる毒性プランクトンによる貝毒が発生することになり、極めて重要な漁業問題となります。しかし、今のところ太平洋の水が入ってきた痕跡はありません。湾内に存在するプランクトンを調べることによっても、外海水の侵入の実態は明らかにできるかもしれませんが、そこまでは調査しておりません。

 

≪質問票4] → 小坂≫

岩手、宮城では大きいホタテ貝が生産され、なぜ陸奥湾の方が小さいのか。

陸奥湾の生産者は、kgあたり4〜5枚の生産は歩留まりが悪いという理由で半成貝の出荷になる。よって、青森市の市場は、夏は三陸のホタテ、冬は北海道のホタテが市場を占拠している。

陸奥湾で大きい貝ができない理由は何か。

 

(小坂) 今の宮城、岩手は確かに大きい貝を出荷しています。なぜかといいますと、宮城、岩手は親潮系です。西田先生もおっしゃったように、親潮系の水は冷たいです。不思議だと思いますが、夏場は陸奥湾より岩手や宮城の方が水は冷たいです。親潮の影響で夏でも水温は低いです。

陸奥湾の去年最高水温は29℃でした。ほとんど水が動かず、太陽に照らされて、水温がどんどん上がったのですが、夏場の陸奥湾の水温は、ホタテにとってかなり危ない水温帯と言われています。

今、陸奥湾では半成貝の出荷ですが、半成貝というのは4〜6月の出荷です。そのあと、夏場、陸奥湾ではかなり水温が高くなります。ホタテは大体20℃を超すと危険信号が出ます。23℃になると死ぬ、死にやすい、死ぬかもしれないというリスクがかかってきます。

 

 

 

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