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重金属と環境ホルモンの測定問題については、陸奥湾については青森市単独ではできないため、関係者の方にお知らせいただきたいと思います。

 

(橋本) 今の環境ホルモン、重金属の問題について、小坂さん、何か補足してください。

 

(小坂) 県は、水産部ではなく、環境サイドで陸奥湾の重金属を定期的に測定していますが、環境ホルモンまで調べているかどうかは知りません。

それから、貝殻の処理についてですが、結局は採算が合うかどうかです。石灰にするなど色々やったのですが、採算が合わないということが今までありました。最近また民間で貝殻を石灰にして販売しようという実験的な研究はやっています。

平舘あたりでは、貝殻を健康食品、カルシウムとして販売しているという例もあります。石灰は天然のものを取った方が安いということもありますので、最終的に採算が合うかどうかは、その企業や行政がいかにバックアップするか、それが利用されるかどうかで決まってくるかと思います。

 

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小坂善信

 

(橋本) 9万トン、130億円に及ぶホタテの生産ですから、貝殻、ウロのリサイクルは重要な課題として、行政も民間もタイアップして取り組んでいただきたいと思います。

 

≪質問票2] → 西田≫

陸奥湾の海底泥の組成と、漁業への影響はどうなのか。

 

(西田) 底泥の採取と分析はたぶん県の方で実施されていると思います。詳しい資料はそちらをご覧いただきたいと思います。

底泥がどう漁業に影響を及ぼすかということですが、先程講演の中でもお話ししましたが、水がきれいでも、水と底泥の間で物質のやり取りが行われるので、軟質の底泥(ヘドロ)がなくならないかぎり、栄養塩(汚濁物質)が供給されつづけます。小坂さんの図面にもありましたが、深みのところに泥がたまり、アンカーが利かないくらい多量に堆積しているのは確かです。

水質悪化の原因の主たるものは、人間も含めた生物の活動です。二枚貝は常に水を浄化するということはよく言われます。濁質とともに窒素やリンを体内に取り込み成長するからです。それを人間が採取すれば間接的に汚濁物質は陸上に運ばれ、水中の汚濁物質が減ることになります。

しかし、貝はプランクトン(窒素、リン)を摂取すると同時にフンを出します。通常、そのフンはナマコなどの底生生物によって分解されます。そして、そのバランスが保たれていればいいのですが、例えばホタテ貝の養殖が盛んになり、その結果、水中のプランクトンが減少し、水質が非常によくなったとしても、海底には排泄物が多く残ることになります。

その排泄物が生態系ピラミッドの中で処理できないぐらい多ければ、海底への堆積が始まります。そして、夏期の成層化にともなう水循環の悪化が底層の酸欠状態をまねき、さらに窒素、リンの溶出を助長し、水質の長期的悪化を引き起こします。当然、水産業にも影響が出てきます。つまり、ホタテ貝から出るフンも無視できないのです。

水質の将来予測をするときには、通常、陸域起源の水質問題として扱います。陸からどれだけ汚濁物質が供給されるかが重要視されます。陸奥湾の場合、陸域起源の他に、ホタテ貝によってどれだけ汚濁物質が除去され水が浄化されるかとともに、貝によってどれだけ汚濁されるかということまでもカウントしなければ、水質の正確な将来予測はできないのではないかと思っています。

 

 

 

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