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最近本で読んだのですが、アメリカのクリントン大統領のブレーンである技術者たち(ベトナム戦争に反対した世代)がやっているロッキーマウンテン・インスティチュートというものがあります。そこでは、アワビやホタテなどの貝殻や、クモの糸など、生物の持っている力をどう産業に活かすということをすごく熱心に考えています。

人間が産業のエネルギーを使って物を作ろうとすると、ものすごい莫大なエネルギーがいります。ところが、アワビにしても、ホタテにしても、海の中に置いておくと勝手に貝殻を作ってくれます。アワビの硬い殻を、人間はエネルギーなくしては作れません。ところが、海は自然に作ってくれます。それを産業に活かそうではないか、ということで、研究成果を分厚い本にして出しています。

クモもそうです。クモの糸1本は、実はナイロン1本よりも強いのです。それはもちろん人間が作ろうとしても作れないので、クモの糸を集めて何かできないか。と、このように面白い発想で色々とやっています。

先程のお話を聞いていて、ただ捨てたり燃やしたりするだけではもったいないので、何かできるのではないか、という気が素人的にしました。そういう研究も必要かな、と思って聞いていました。

最後です。先程も、ダイオキシンや重金属に魚介類が汚染されていることも問題だという指摘がありました。これは私がマスコミの中で報道するときにも、水産庁もすごく気を遣います。

所沢のホウレン草がダイオキシンに汚染されたとき、水産庁が最も恐れたのは「これが魚に飛び火したらどうしよう」ということです。実際、所沢のホウレン草と魚介類のダイオキシン汚染とどちらがひどいかといいますと、水産庁は魚介類の方が濃度だけで見るとひどいことは知っています。それは十倍・百倍程度の高さではありません。

重金属のカドミウム汚染にしても、やはり貝にかなり蓄積しています。ですから、「貝が危ない」ということになると、いくらいい湾で作っていても、いったんそういう情報が流れてしまうと売れなくなってしまうという問題が常にあるわけです。

ですから、「たとえダイオキシンやカドミウムで汚染されていても、これは日本でとれたものだから、少しくらいはやむをえないのではないか」という意識を消費者に理解してもらうような運動を常にやっておかないとダメかな、ということはいつも感じるところです。

フランス人やドイツ人は牛乳をたくさん飲みます。ところが、牛乳の中にもダイオキシンは入っています。煙突から出たものが牧草にかかって、その牧草を牛が食べれば、当然牛乳に入ってきます。その場合、フランスなどでは「汚染がある一定レベルを超えたときは政府が買い取りましょう」という法律を作って対処しています。

日本の水産庁は、どこの海でとれた魚介類の汚染が高いかは知っています。それに対して「これ以上のものは補償しましょう」と前もって決めておいてくれれば、不買運動が起こったときに対処できるのですが、そういうことを何も決めていません。ただ隠しているだけです。

例えば、「陸奥湾のホタテはカドミウムが高い」ということがいったん報道で流れてしまうと、イメージを変えることは容易ではありません。ですから、そのようなこともやはり考えておかなければいけないのではないか、と先程のお話を聞きながらちょっと感じました。

長くなってしまうといけないので、感じたことを簡単にまとめてみました。

 

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佐々木誠造 小島正美

 

 

 

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